松田技術部長が機器メーカー側の取組みを紹介!

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No.651 2017年6月

モントリオール議定書採択30周年記念シンポジウム
「フロン対策の推進のために今できること」
パネルディスカッション参加報告

 6月17日に渋谷神宮前にある国連大学で「地球のために、フロン対策」と題し、環境省主催のモントリオール議定書採択30周年及びHFC改正採択記念シンポジウムが開催された。当日は180名ほどが参加。展示スペースにはフロン対策に関するパネルや機器の展示もあった。
 講演として、午前に基調講演「議定書の成果とHFC改正」を国連環境計画オゾン事務局次長の関めぐみ氏が、特別講演「地球温暖化問題について」を登山家の野口健氏が行った。
 また、午後からのパネルディスカッションでは当工業会から技術部長の松田憲兒がパネリストとして参加したのでその様子を報告する。なお、今回のパネルディスカッションでは、主として冷凍冷蔵器や空調関係の機器に使われているフロン冷媒について議論されている。

写真1:会場の様子

パネリストは以下の通り (敬称略)



 【前半】
 前半は地球温暖化対策としてのフロン対策、小売業者におけるノンフロン機器の導入促進導入効果、今後の機器開発見通しについての議論があった。
 最初に環境省がフロン対策の最新動向と対策の重要性をまとめたビデオを15分ほど視聴し、そのうえで、コーディネーターで群馬大学教授の西薗大実氏は「フロン対策は、オゾン層保護と温暖化対策という二つの面で大変重要である」と定義した。
 次にメーカー代表として当工業会技術部の松田憲兒より身の回りにある冷凍空調機器に様々な冷媒が使われていることや、地球環境保護の理念に基づく行動計画として「省エネ」、「冷媒の大気放出抑制」、「新冷媒への転換」の三つの柱を立てた取組み内容などを説明した。特に地球環境保全を念頭においた新冷媒の考え方として、「可燃性リスクが少ない安全性」「温暖化係数が低い環境性」「省エネ機器性能が同等以上」「妥当なコストである経済性」の確保を最優先に冷媒選定・機器開発を行っていることを強調した。具体的にはCO2の特性を生かした家庭用・業務用給湯機があり、使用環境条件により省エネ性・安全性・経済性の総合的な観点から、より温暖化係数の低いHFCやHFO系冷媒への転換を進めた空調・冷凍機製品群等があるとの報告を行った。

写真2:当工業会の取組みについて説明をする松田技術部長

 続いて西薗氏は、「フロンには種類がありオゾン層を破壊しないものに転換されてきたが、この代替フロンには温暖化の問題があるため、現在ではCO2など今まであまり使用されていなかった冷媒を利用する機器が増えてきた。」と述べるとともに、ユーザーとしての意見を日本チェーンストア協会の生活協同組合連合会コープネット事業連合開発管理部担当部長の中島修氏に求めた。中島氏からはノンフロン機器導入の経緯やその効果について報告があった。
 次にノンフロン機器の導入が進んでいる冷凍冷蔵の分野だけではなく、その他の分野も含めて温暖化対策としてどのようなものが期待されるのか、今後の見通しについての議論が行われた。
 その後、現状では機器のコストが高くなってしまうノンフロン機器を導入する際のコストの問題について、環境省の馬場康弘氏から取組みが説明された。「フロン排出抑制法の指定製品制度は機器の種類ごとに目標とする温暖化係数まで下げていく仕組みであり、その中で自然冷媒や温暖化係数の低い製品を優先的に誘導する形をとっている。また、冷凍冷蔵の世界で自然冷媒使用の技術開発が進められており、環境省では平成26年度より補助金制度を本格的に行っている。現状では機器コストが高いノンフロン機器を普及させるために、補助金制度を設けており、本制度を活用し、自然冷媒機器の導入コストを下げることで普及を図っていく。また、この政策が国内のみならず世界にも広がっていくことを期待し、本政策を引き続き行っていきたい。」とした。
 また、当工業会の松田が「社会的にも身の周りに溢れている冷凍機やエアコンにフロンガスが含まれていることを理解していただき、環境影響の少ないものに変えていくことを意識してもらうことが大切である。」と述べた。

写真3:パネルディスカッションの様子


【後半】
 後半はインフラとして現在使用しているフロンの漏えい防止、回収をいかに進めるか。また、この取組みをアジアはじめ世界全体の取組みとし広げていくためにはどうすればよいかについて国際協力の点から議論が行われた。
 まず、高知工科大学教授の中根英昭氏より、現在冷媒として使用されているフロンの種類と、特性について解説があった。また、温室効果ガス排出の算定方法やHFC排出量の推移を示し、主に稼働時と回収時に漏えいがあることが報告された。
 続けて一般社団法人日本冷凍空調設備工業連合会の専務理事南雲誠氏より、「機器ユーザーや回収業者に向けた説明会の開催、技術者に対しての実技育成、フロン使用機器の点検やフロン回収の啓発を行っている。」と報告があった。
 これらの報告を受け、この取り組みを途上国にも広げるため、途上国におけるフロン回収の現状について、国連環境計画オゾン行動計画プログラム東南アジア環太平洋地区地域ネットワークコーディネーターのフ・シャオフェン氏は次のように述べた。
 「アジアでは各国の尽力によりCFCの使用が段階的に削減されたが、まだまだHCFCの消費量が多く、キガリ改正もHFCの生産と消費を規制しているものの、排出は規制されていなので、国際的な法的義務が必要との課題を示した。さらに、アジアの非OECD(経済協力開発機構)諸国に対する支援が気候変動緩和の鍵である。」とした。
 続いて、使用時の点検の重要性についての議論が展開された。
 当工業会の松田より点検に関して「ノンフロン機器、フロン機器ともに点検をすることによって、故障や漏えいを未然に防止できるとともに、本来に性能を保つことができるため、コスト面でメリットがある。」と報告があり、西薗氏は点検について「稼動時における冷媒排出を減らしていくことが課題であるが、これには適切な点検を行って、実感としてわかる効果を上げることが必要。」と述べた。そして点検に関して、ユーザー視点の意見を中島氏に、専門家としての意見を南雲氏に求めた。中島氏は「簡易点検では、ポイントを抑え、点検を習慣づけることが重要。それにより、ユーザーはお客様へ常に品質が高く保たれた食品を提供できるようになる。」と述べ、南雲氏は、「専門家が行う定期点検はユーザーから信頼を得られる専門的なスキルを持って行うことが大切である。」とし、西薗氏は改めて「理解・周知・実施が重要である。」発言とした。
 もう一つの排出の原因である廃棄時についてはフロン回収を適切に行う為に、廃棄の最終決定はユーザーが行うことを理解していただくことが大事であり、今後いかに排出抑制の仕組みを実施していくかが重要とした。
 西薗氏は「日本国内では取組みが進んでいるが、モントリオール議定書をきっかけにいろいろな仕組みが整理されつつあるが、アジア諸国ではまだまだ課題が多い。」と述べ、アジアに排出抑制の取組みを広げるための意見を中根氏に求めた。中根氏は「排出抑制を行うためには排出インベントリーを作成し、実態を把握し、統計データを整理していく。そのためには様々なデータを持っている主体が必要である。そしてフロン対策の重要性とメリットを社会各層に理解してもらうことが大事である。」と発言があった。

写真4:パネルディスカッションの様子

 制度構築に関して馬場室長は、「フロン排出抑制法は世界に冠たる仕組みで、日本の経験をアジアにも活かしていきたい」と述べた。
 最後に西薗氏は、「フロン対策は国際的なもので、地球全体の問題として、まずはアジアの国に広げてくことが大事である」と締めくくりシンポジウムは終了した。

写真5:展示の様子


写真6:展示説明を受ける環境大臣の山本浩一氏