TBSテレビ「Nスタ」に出演~コンビニのアイスのケースは、蓋がないのにどうして溶けないの?~ 8月7日(月)、サンデン・リテールシステム株式会社(以?
日本冷凍空調工業会主催の講演会報告
No.653 2017年10月
1.モントリオール議定書に関する対応と今後の展開
経済産業省オゾン層保護等推進室の大谷一真氏から「モントリオール議定書に関する対応と今後の展開」と題した講演があった。(写真1)
写真1:経済産業省オゾン層保護等推進室 大谷一真氏
昨年10月にルワンダ・キガリで開催されたMOP28で代替フロンを新たに議定書の規制対象とするモントリオール議定書の改正提案が採択された(キガリ改正)。このキガリ改正は、国全体のHFCの生産量及び消費量を一定水準以下に抑えることが主な内容である。
2019年1月改正に向け、日本側としてそれを担保する法改正を行っていく。
先進国グループに属する我が国は、HFCの生産・消費量を、2011~2013年の平均を基準として、2019年から削減を開始し、2036年までに85%分を段階的に削除する。(図1)
2025年までは削減目標達成見込みであるが、それ以降は対策検討が必須となる。具体的にはHFCについて、削除スケジュールの法定化、生産・消費の割当規制、輸出入管理制度等の整備が必要となり、「オゾン層保護法」の規制対象物質にHFCを追加するなどの法制化議論を始めている。フロン類の製造(上流)から廃棄(下流)に至るまでの包括的な対策は、既に「フロン排出抑制法」により、世界に先駆けて実施している。(図2)
なお、上流対策としては、HFC冷媒製造量の制限の他に以下を推進している。
(1)HFCの低GWP化と指定製品制度
フロン類使用製品の低GWP・ノンフロン化を進めるため、フロン排出抑制法に基づき、家庭用エアコンなどの製品(指定製品)の製造・輸入業者に対して、出荷する製品区分毎に加重平均で目標達成を求める指定製品制度を導入している。
現在使用されているHFCに変わるGWPの低い新しい物質、及びそれを使った機器の開発が不可欠である。その中でも自然冷媒を使用した製品が実用化されてきているが、コスト面の課題等から転換が加速しないという課題があり、コストダウンの検討努力が急務である。国としても普及のために必要な支援を検討する。
また、中・下流対策としては、機器利用者による使用時漏洩の防止、廃棄業者による廃棄時回収率の向上が必要であり、回収の義務、仕組み作りや回収メリットを引き出す案も国として考えていく。
国際枠組みとしてのキガリ改正の着実な国内担保をオゾン層保護法の改正で図っていくが、2017年9月までに国内規制をまとめる予定であり、遅くとも2018年内に、国会手続き・承認を加えて、事業者へ製造量の割当等の準備作業を終了させる。
HFCの低減による地球温暖化防止対策は、ギガリ改正の直接の対象である製造業者だけではなく、HFCに関わる主体の全て、すなわち国民全体で取り組まなければならない。現時点では国民に広く理解が進んでいるとは言えず、皆様には今後共協力をお願いしたい、と絞めくくりがった。
モントリオール議定書改正提案の採択を受け、国内担保の方法と現状、今後の対策について良くまとめられており、講演内容もわかりやすく良く理解できた。また、HFC削減は、官民一体で対応すべき課題であり、重要な内容であることが再認識できた。
株式会社前川製作所NewTon事業ブロック生産グループの八下田新一氏からは「NewTonに関する自然冷媒冷凍機の省エネ効果について」と題した講演があった。(写真2)
写真2:株式会社前川製作所NewTon事業ブロック生産G 八下田新一氏
前川製作所は国内に3工場、60事業所、海外は41ヶ国、7工場、100事業所を構え、食品、乳業、飲料、ビール、ケミカル、船舶、空調、物流など幅広い分野でグローバル展開している冷凍機メーカーである。
前川製作所は、モントリオール議定書、京都議定書の政府の方針並びに地球環境保護の観点から自然冷媒の利用促進に努めている。NATURAL FIVEを提唱し、あらゆる用途に最適なノンフロン冷媒を選択することによって「省エネ化」と「ノンフロン化」を同時に達成できる技術開発に取り組んでいる。NewTonはその活動の一環として旗艦モデルの位置づけとしている。
自然冷媒のアンモニアを使用するにあたって安全・安心を第一に考えた「NewTon Basic concept」を念頭に商品化を進めてきた。その付加価値である省エネ性・高メンテ性に関しても高い評価を得てきている。
フロンと比較して冷凍効果の高いアンモニアを使用、冷媒量の極少化、ガス密度の高いCO2冷媒を二次媒体とすることで配管の細径化と安全性を高めたシステムを実現できている。
現在、冷凍冷蔵倉庫、食品用フリーザー、スケートリンク、食肉工場等に1,000台を超える出荷実績がある。冷凍冷蔵倉庫のリニューアルにおいては、NewTon、高断熱化、サーモシャッター、デシカントヒートポンプなどの組合せによりエネルギー原単位が30%程度削減できている実績を多く積んでいる。シンプルなシステムでありながら高いパフォーマンスと信頼性の高い装置に仕上がっている。
またメンテナンスサポートにおいては世界中で稼動しているNewTonのリモート監視~サーバーのクラウド化~性能分析~故障予兆へと発展させてきた。
これまで集めたビックデーターとノウハウを有効活用し、前川製作所では更なる可能性を求めて、NewTonを次のステージに向かって進化させ続けていく所存であると、締めくくりあがあった。
ダイキン工業株式会社CSR・地球環境センター(兼)空調生産本部の平良繁治氏からは「空調機器に関する新冷媒の最新動向」と題した講演があった。(写真3)
世界の地球温暖化対応としての「モントリオール議定書キガリ改正」を受けての『冷媒と空調機器を持つダイキン工業の対応』について、冷媒と空調機器のライフサイクルで持続可能な仕組みを含めて総合的に紹介があった。
業界で課題とされている冷媒の課題と対応、および空調機の冷媒漏れ、回収と再生冷媒の課題と対応など総合的な観点から新冷媒の最新動向に関して紹介があった。
写真3:ダイキン工業株式会社CSR・地球環境センター 平良繁治氏
これまでの経験と今後の対応としてダイキンは、常に環境課題解決のために先進的な取組みを実施していることを「過去に各種冷媒HFC、HFO系混合、CO2、プロパン等の評価を実施」し、「その結果、スプリット型の家庭用・業務用空調機ではR32が最もバランスが取れた冷媒と考えること」、「各国政府やステークホルダーと共に、今後も適材適所の冷媒の選択に向けた活動を続け、地球温暖化抑制に貢献すること」の説明があった。特に、空調機器の代表であるミニスプリットエアコン(ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン)ではダイキンがR32を世界で初めて市場投入し、その後全メーカーがダイキンに引き続き市場投入している実績の提示があった。具体的には、2012年から世界50ヶ国、累計900万台を販売(他社を含めると推計約2300万台)、R32冷媒転換によるCO2削減量の効果は約4,000万トン以上であると提示があった。
まとめとしては、「空調用途のR410A(高圧)に替わるバランスの良いGWPが低く、かつ不燃冷媒は現時点で無い。」とし、このことは日本及び世界でもR32の市場実績からも窺えるとしている。ただし、空調の用途に応じては適材適所な冷媒を選定すべきで「空調機の動向は冷媒の多様化」の方向に向かっていると説明があった。
また、キガリ改正に対しても「空調機はR32で冷媒回収、再生を合わせて総合的な持続可能な社会システムを構築できれば対応可能である」と説明があった。さらに、「冷媒メーカーの次世代冷媒化の役割としては、ニーズの多様性に応える冷媒を提供し続け、「冷媒の再生および再利用」を実行し、持続可能な循環型社会を目指すことが必要不可欠な取組みである。空調メーカーの役割は、空調機のエネルギー効率向上と多様なニーズに応える最適な次世代冷媒の選択に取組み続けることも必要である。」と、冷媒メーカー、空調メーカーの立場から説明があった。
最後に、下記に示す「キガリ改正の対応に関するダイキンの方針」を紹介する。
【ダイキンの方針:プレス発表より抜粋】
1.HFCフェーズダウンのためのキガリ改正を歓迎します。
2. ダイキンのポリシーは「冷媒の多様性」です。
冷媒の選択は、オゾン層破壊係数や、温暖化係数の数値だけでなく、機器ごとに安全性、エネルギー効率、経済性、環境性、回収と再生可能性、など多面的に地球温暖化への影響の評価が必要です。
3. ミニスプリットやマルチスプリットなどの空調機には、R32が適しています。
R32のこれら空調機の適用は、HFCフェーズダウンスケジュールの達成、また現在進行中のHCFCフェーズアウトスケジュールの達成に大きく貢献します。
その他の機器に最適な冷媒は、鋭意研究を進めています。
4. 「Sooner, the Better」(可能な施策はできる限り早く実行する)というアプローチが必要です。
ダイキンは、最適な冷媒を機器毎に特定でき次第、どんどん商品化を進め、普及を促すことで、地球温暖化抑制に貢献します。
5. 地球温暖化にさらにもう一歩貢献すべく、機器毎に適材適所の最適冷媒の探索を継続してまいります。
今後の課題としては、R32は微燃性であるため冷媒充填量の多いビル用や設備用の空調機に関しては国内、海外各国、国際規格などの法的な整備と規制緩和が実用的な観点が必要との発言があった。
今後も革新的な新しい冷媒が提案されて、実用化に至るまで議論を行うことと併せて、環境対応を進めていきたいと締めくくりがあった。
報告 技術部 岩崎