2月2日、日本冷凍空調学会主催の掲記セミナーに参加したため、その概要を二号(No.656、657)にわたり報告する。本セミナーは日本フルオロカーボン協
海外短信クローズアップ
No.656 2018年3月
“R32を普及させるためになすべきこと”
欧州ではF-ガス規制によりHFCの使用可能量が2018年より37%削減される。低GWP冷媒への転換がいよいよ差し迫ったものとなり、冷凍空調産業と機器の使用者は、いわゆる“微燃性”冷媒という概念を受け入れる必要性に迫られている。
冷凍空調のエンジニアリング会社であるロイヤル・レフリジレーション・アンド・エアコンディショニングのジェレミー・ローランド氏は「ビルの所有者にとって、R32のような冷媒を受け入れることは、EN378設置基準に照らしても多くの議論がある。もし冷媒が漏れた場合、ガスはどれくらい燃焼するのかと顧客から必ず質問される。我々自身も燃焼性を調べ、トレーニングを受けてみたが、心配な点は何もないことがわかった」と述べている。
2017年6月に起きたグレンフェル・タワー火災では多数の死者がでたことを受けて、ビル設計会社であるヒルソン・モランのデビッド・フォール氏は建設やビルサービス会社は現在リスクに対してとても敏感になっていることを強調し、「グレンフェル以来人々は用心深くなっている。“微燃性”とは何を意味するのか明らかにしなければならない」と述べた。
360エンジニアリング(360 Engineering Ltd:空調および換気システムの設計と設置に特有の知識を持つ機械工学業界の専門家)のカティー・フロイド氏は「空調でR32に代わる冷媒はない。ダイキンも三菱電機もR32をマストに掲げた。多くの設備業者は2社が決めたのなら業界全体もその方向で進むものと思っている」と述べた。
マーケットリーダーであるダイキンと三菱電機の2社がR32を採用する方針を明らかにしたことにより、これが欧州全体の流れを形成していくであろうことをこの討論でのまとめとした。
「R32導入は実行可能な解決策ではあるが空調機の容量が14kWまでしかなく、容量範囲が小さいことが問題となっている」とフロイド氏より指摘があり、欧州でR32を採用したVRV/VRF機器がいつごろ市場に投入されるのかが議題になった。
英国ダイキンのマーティン・パッシンガム氏が「ダイキンは14kWを上限としたR32を用いることで、VRVシステムで使用する機器の開発を2019年から2020年にかけて開発を進めている。開発の大部分は国際標準とともに各国での規制に準拠する作業に費やしている」と述べた。基準はIEC60335/2/40や60335/2/89であり、これらは現在見直しされている。
コンサルタントであるレイ・グラックマン氏が「EN378は強い規制であるが見直しされるであろう。60335標準は特定の製品区分を対象としたもので、これもA2Lをどのように取り扱うか近々発表される。これによりいくらか規制は緩和されるであろう」と見通しを述べた。
討論会の締めくくりとしてパネリストから次のような意見が述べられた。
ローランド氏は「製造者の立場からいうと、容量の大きな機器にまで低GWP冷媒を使用するためにR32は必要な冷媒となっている。現在、これまで議論したように容量で制限されているので、R32は冷房において“よりグリーン”な低GWP冷媒であることを信任することが必要だ」と述べた。
フロイド氏は「設置業者や顧客に対する教育は今後も続けていく必要がある。しかし大きな課題は空調機の供給側にある」と製品開発の課題を指摘した。
フォール氏は「R32の情報は市場に流されてはいるが、技術者は微燃性ガスへ切り替えの判断をするだけの十分な情報をまだ持っていない。教育はR32を普及させるためのキーファクターになろう」と述べた。
グラックマン氏は「HFC削減のモデルである“ガポメーター”によると、冷房産業は2020年までに14kW以下の空調機のほぼ100%にR32を採用しないと削減目標を達成できない」と指摘した。
パッシンガム氏はR32の普及には空調業界が全体として取り組む必要性を述べ、「容量の大きなシステムの開発では配管長が長くなるため、効率を保つと共に冷媒の充てん量を減らすことに注力している」と語った。
〔出典RAC December 2017〕
以上