オゾン層破壊効果のあるフロンの生産量・消費量の削減義務を課した「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」は1987年9月に採択された。国
省エネルギーセンター会長賞
三菱重工サーマルシステムズ株式会社/ 関西電力株式会社/東京電力ホールディングス株式会社/中部電力株式会社
No.657 2018年5月
関西電力株式会社
東京電力ホールディングス株式会社
中部電力株式会社
写真1:表彰される 中部電力株式会社 エネルギー応用研究所長 植地修也(当時)
東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所副所長 蘆立修一
関西電力株式会社 お客さま本部副本部長 理事 田井公浩
三菱重工サーマルシステムズ株式会社 取締役社長 楠本馨
1.製品開発の背景
今回、三菱重工サーマルシステムズ株式会社と関西電力株式会社,東京電力ホールディングス株式会社,中部電力株式会社の4社が共同開発した“熱Pu-ton”は、通常のエアコンと同様に、大気から熱を取り込む室外機(熱源機)と、熱風を直接生成できる室内機(熱風発生装置)のセパレート方式で構成しており,空気熱源ヒートポンプとしては日本最高の90℃熱風を生成し、COP3.5(※1)(※2)という高効率を達成した。これにより、工場などの熱風を利用する乾燥工程に直接室内機を設置することが可能であり、更に、室外機は屋外に自由に設置することができ、より簡単にヒートポンプシステムを産業分野へ適用することが可能となった商品である。(図1)
(※1) COPは,Coefficient Of Performanceの略であり,熱風を供給する加熱能力
を消費電力で除した値。
この値が高い程,高効率であることを示す。
(※2) 外気温25℃(相対湿度は70%),室内機吸込み20℃,吹出し80℃の条件
における値。
ここで、産業分野にヒートポンプシステムを普及させるためには『製品』の提供だけではなく、『エンジニアリング』及び『アフターサービス』が不可欠である。
今回、熱Pu-tonという『製品』を核とした、乾燥工程に適用する際に必要なシステムの提案(『エンジニアリング』)を行い、導入後にも24時間遠隔監視システムによる故障に対する保全(『アフターサービス』)を行うという、導入から運用に至るまで包括的なビジネスモデルを構築した。
(1)製品
熱Pu-tonの特長は下記。
1)エアコンと同じく、室内機と室外機が分離したセパレート方式であり、
エアコン並みの据付工事が可能。
2)エアコンでは実現できない60~90℃の熱風吹き出しが可能。
3)熱風供給による圧力比増加に伴う圧縮機の性能低下を圧縮機2台を直列に
接続し、圧縮機1台当りの圧力比を低下させることにより高効率化を実現。
既設ヒータをそのまま残したハイブリッドシステムを採用することにより、
熱Pu-tonの故障時やデフロスト(霜取り)運転時という熱風供給が出来ない場合
でも既設ヒータでの乾燥が可能となる。更に、乾燥温度が90℃以上の乾燥装置に
も熱Pu-tonの適用が可能となる。(図2)
インターネットを介して、熱Pu-tonの運転状態を24時間365日監視し、
運転データを分析評価することにより、故障に対する予防・保全が可能である。
更に、異常発生時に緊急メールを発信すると共に、故障前の運転データから故障
原因の早期特定と早期修理が可能である。
試験室の評価だけではなく、ビジネスモデルとしてドライラミネータの乾燥工程へ適用し、省エネルギー性を計測した。結果、既設の蒸気式ヒータ対比、エネルギー使用量、CO2排出量、ランニングコスト共に約5割の削減効果があることを確認した。(図3,4)
4.おわりに
この“熱Pu-ton“を核としたビジネスモデルを産業分野に広めることで、エネルギー使用量及びCO2排出量を削減させ、地球環境保全を推進させていく。
一方、工場や物流倉庫等といった大空間での暖房空調では燃焼系の温風暖房機が多く使用されているが、通常のエアコンでは吹出せる温風温度が低く、人に届くまでに冷めてしまうという課題がある。70℃以上の高温風を吹出すことが可能な熱Pu-tonであれば、この課題を解決することが可能であり、燃焼系の温風暖房機の代替としての需要も期待ができる。