今回は八ッ場ダム見学の番外編で、ガトーフェスタ ハラダ本社工場見学をお届けします。 ラスクと聞くとどのようなイメージを持ちますか?筆者の年齢がある程度?
今、ダムが熱い!八ッ場ダム見学会(本編)
No.661 2019年2月
2018年10月16日(火)に八ッ場ダム建設の際に行われているダムクーリングについて見学してまいりましたので、ご報告致します。
※この度、国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所様の許可を得て、八ッ場ダム本体建設JV様の協力のもと工事見学が実現しました。
八ッ場ダムは群馬県吾妻郡に位置する、利根川水系ダムの一つです。2015年より施工を開始し、2019年度の完成を目指しています。
※詳細は国土交通省関東地方整備局ホームページより確認できます。
1.八ッ場ダム建設の経緯と由来
昭和22年、関東地方はカスリーン台風による大被害をうけ、下流部の洪水被害の軽減を図るため、利根川上流にダムを築いての治水事業の一環として昭和27年に計画されました。主に、以下4つの役割があります。
①洪水調節
②新規都市用水の供給
③流水の正常な機能の維持
④発電
八ツ場ダムは地域の洪水被害を防ぐため、利根川水系でも最大級の洪水調節容量を誇り、急激な洪水があってもダムに水を貯め、下流には安全な水量を流す治水のエースの役割が期待されています。
ところで皆様、八ッ場(やんば)という名前の由来はご存知でしょうか?
〇 狭い谷間に、獲物を追い込んで、矢を射た場所であることから
矢場(やば)→やんば
〇 狩猟を行う場所に8つの落とし穴があったことから
8つの穴場→やつば→やんば
〇 川の流れが急であることから
谷場(やば)→やんば
などの諸説があります。
出典:八ッ場ダム工事事務所(関東地方整備局ホームページ)
2.八ッ場ダム施設見学報告
まず、八ッ場ダムを挟んで右岸側にて、コンクリート打設作業を見学しました。大きな油圧ショベルのアームの先端に取り付けられたドラムカッターで表土を掘削し、岩肌を露出させます。
岩盤は水洗いされた後、モルタル→コンクリートの順で打設されていきます。ミルフィーユのように約1mごとにコンクリートを打っていきます。許容の誤差は±5cm以内と非常に繊細な作業となります。
写真1:右岸側からの景色
写真2:ドラムカッターで岩肌を露出させる作業
八ッ場ダム左岸側では、コンクリートの製造施設を見学しました。コンクリートの材料として適した大きさの砕石(以下、骨材と呼びます)を作る骨材プラントヤードから運搬され、4種類の粒度に区分けされた骨材は、それぞれ専用の骨材貯蔵ビンに保管され、セメントや水と練り混ぜられてコンクリートとなります。粒度の違う骨材を現場にて配合し、ダム建設に適したコンクリートを製造しています。
写真3:骨材貯蔵ビン
続いて、原石山・骨材プラントヤードを見学しました。原石山から切り出した岩石を、ダム本体のコンクリートの材料として適した骨材にするための設備です(写真4)。
岩石をコンクリート材料に適した骨材にするには、複数の破砕設備で徐々に小さい粒度まで砕いて作ります。もちろん、一番小さくなった砕石(原砂)は、コンクリート材料に欠かせない砂に加工することで、切り出した岩石を無駄なく使い切ります(写真5)。
砂を作る「ロッドミル」と呼ばれる設備は、原砂とたくさんの太い鋼棒を入れた大きなドラムを回転させ、鋼棒の間に原砂が入り込む「すりつぶし作用」で、良質な砂ができるとのこと。その結果、直径9cm程の鋼棒も次第に摩耗し(写真6)、取替時の鋼棒直径は約半分以下まで、痩せ細ってしまいます。
写真4:骨材プラントヤード全景
写真5:大きさの違う骨材
写真6:ロッドミルの鋼棒の摩耗状況
ここで製造された骨材はダム本体まで、なんと総延長約10kmに及ぶ距離を、総計27本のベルトコンベアでコンクリート製造施設に隣接した骨材貯蔵ビンへ運搬されます。最長のベルトコンベアは、1本で約3kmもの長さを持つものがあり、工事期間中に専用で使用するトンネル内(写真7)、廃線となった鉄道線路上等、延々とダム本体工事現場まで伸びています。
3kmもの長い距離を1本のベルトコンベアで動かすため、機械の故障などが心配されますが、定期的に停止し、メンテナンスをしているそうです。
写真7:トンネル内に伸びるベルトコンベア
3.ダム建設に関わる冷凍空調技術
「ダムクーリング」って、ご存知ですか?何となく「ダムを冷やすんだ」のイメージが出たら及第点。でも「なぜ?どのように?」の疑問が湧くことと思います。
ダム建設には膨大な量のコンクリート打設が必要ですが、コンクリートは固まる過程で発熱するため、ダムのような大きな構造物は、その内部温度が上昇します。この時、コンクリートの内部と外部の間に温度差が生じるため、温度応力でコンクリートにひび割れが発生する原因になります。この対策のため、コンクリート温度を低くすることを「ダムクーリング」と呼び、冷凍空調技術が大活躍するのです。
八ッ場ダムで用いられているRCD工法では、プレクーリングが採用されています。
プレクーリングは、製造時のコンクリート温度を低くする工法です。骨材と、練り混ぜ水を冷やし、コンクリート内部温度をできる限り低くすることで、内部温度と表面温度の差を小さくし、ひび割れを防ぐ役割を担っています。
写真8:チラー設備の設置建屋
八ッ場ダムでは、以下の2通りの設備を使用しています。
練り混ぜ水を冷やす設備 :チラー設備【315kW×4基】
骨材を冷やす冷風設備 :チラー設備【335kW×4基】
空調設備で冷却を行っているのは「骨材」です。大規模な冷風冷却設備から、冷風を送る大きなダクトを骨材貯蔵ビンに接続し、骨材に15℃の冷風を当てることで骨材を冷やすことができます。ダムコンクリートの配合は骨材が多い配合であるため、骨材をあらかじめ冷やすことで効率よくコンクリートを冷やすことができます。
今年の夏は猛暑の影響を考慮し、補助的にバッチャープラント上層階に骨材を冷やすための工業用エアコンを追加で設置したそうです。また、寒冷紗(黒色の日よけシート)を骨材貯蔵ビン、バッチャープラントに設置しました。
4.所感
今回の見学で、ダムの建設における冷凍空調技術の活躍を垣間見ることができました。また、ダムの基礎知識や、私たちの生活に根付いたダムの重要な役割を改めて認識する良い機会となりました。
近年は、強大な台風の影響も多く、度々洪水や土砂崩れによる被害を耳にします。八ッ場ダムの完成で、今後起こりうる被害が最小限になることを祈っています。
写真9:トンネル前で記念撮影
※今回、国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所様の許可を得て、今回の視察が実現しました。
以上
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