去る2月13日、ダイキン工業株式会社 東京支社会議室にて、当工業会主催の講演会を開催したので、その概要を報告する。今回は「冷凍空調分野における最新動向
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No.663 2019年5月
欧州F-ガス規制を軌道にのせることができるのか
“違法冷媒の流入がF-ガス規制を台無しにするおそれ”
2019年に入ったが、欧州の冷凍空調業界は低GWP冷媒への転換をうまく実現できるのかまだ不確かだ。R404Aおよびその他の高GWP冷媒の禁止を1年と少し先に控え、冷凍空調業界は2018年、大きな破たんを生じるような冷媒不足を回避することができた。しかし2019年まだ主要な冷媒の価格を予測するのは難しい。最新のRAC誌によるラウンドテーブルは、予想される冷媒不足に対し、どのようにしてF-ガス規制を軌道に乗せるのかを討論した。
■2018年のレビュー
冒頭、コンサルタントのレイ・グラックマン氏がこれまでのHFCの削減状況を述べた。R404Aの価格が2017年末に100ポンド(約15千円)/kgまで高騰した。当時2018年1月からHFCの割当量が大きく削減されるため、専門家は冷媒の不足と価格の上昇は避けられないと予測していた。「あれから1年経ったが、我々は冷媒不足に陥ることなく2018年をなんとか無事に乗り切ることができた。何故なのだろう」
グラックマン氏は次のように説明している。「2018年に行われた一連の開発が、価格や供給の問題を緩和しているようだ。2017年に価格が高騰したことや欧州に流入する違法冷媒の増加懸念が開発を後押しした。違法冷媒の流入の問題は皆話題にするのを避けているが、冷媒が足りていたのは違法冷媒が流入したからだ。価格の上昇を見込んで冷媒の在庫を増やしたこともある。また過去12か月から24か月の間にR32やHFOブレンドのような低GWP冷媒を使用した機器の市場投入が加速したこともある」
■製造業者の見方
三菱電機欧州の英国とアイルランド部門の副社長であるディーン・フリント氏は、F-ガス規制の影響により商品ラインナップは大きく変わったと述べている。「販売店900社の調査によると2017年末の時点ではR32を使用した機器の準備ができていると答えた販売店の割合は5%以下であったが、現在では95%になっている。1年間の変化としては大きい。要因はR410Aの価格の上昇を見越したもののようだ。
R410Aはkg当たり60ポンド(約8800円)から70ポンド(約10,000円)になっているのに対し、R32は10ポンド(約1500円)から18ポンド(約2600円)前後だ」製造業者は皆低GWP冷媒のシリーズ化を加速しているとフリント氏は述べている。
「セパレート型のエアコンメーカーはどのメーカーもR32のフルラインアップを揃えている。普及型であれ、高効率機であれ、すべてR32だ」しかしフリント氏は2023年以降GWPの削減がさらに進んだときにR32の次のステップをどのようにするのかが大きな問題だと述べた。
■冷媒の取り扱い技術
ウェーブ・レフリジレーションのコンサルタントであるナビル・クック氏は大きな販売店は低GWPへの移行に抵抗はないが、公平にみて販売店の大多数は可燃性冷媒を使うことにまだ慎重だ。いくつかの顧客は微燃性のA2Lに区分されるHFOブレンドの試行を始めている。あるところはここ数年にわたってプロパン-グリコールを使用している。しかし、小売店の大多数はCO2冷媒に向っている。冷凍の設備業者はCO2冷媒と可燃性冷媒の取り扱い技術は持っている。多くの設備業者はHFCの価格が上昇して冷媒のコストと配管工事のコストが同等になっていることにショックを受けている。彼らがCO2冷媒に向っている理由のひとつだ。
空調機器の製造業者であるエアーメックは自然冷媒とHFOの両方を検討している。同社のポール・オズボーン氏に対して「大型空調機の場合、R32は温室効果ガスの排出を削減するための長期的な解になるのか」と質問された。オズボーン氏は「R32を大型チラーにも当面は使うことになるだろう。しかし長期的にはほかの冷媒も可能性としてはありうる」と述べている。
■さらに冷媒不足か
討論の結びとしてグラックマン氏は次のように述べた。「市場は過去12か月の間に大きな進歩を遂げた。しかし2018年は回避することができた冷媒不足を2019年は起こすかもしれない。2019年は2018年と同じ削減量なのでより大変な年になるかもしれない」またグラックマン氏は「ギリシャでは2018年に冷媒の80%が違法に流入したものだったという。違法冷媒の流入が言われているとおりなら、F-ガス規制の仕組みを台無しにしてしまうであろう」と警告した。
〔出典:RAC December 2018〕
以上
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