2019年7月1日に工業標準化法から産業標準化法に変わりました。 近年、IoTやAIなど情報技術の革新が進み、企業の競争力は、データやその活用に移りつ?
柏の葉スマートシティゲートスクエア見学報告
No.666 2019年11月
10月10日に開催しました当工業会主催の「柏の葉スマートシティゲートスクエア見学会」についてご報告いたします。総勢22名の参加となりました。■前回の施設見学「NITE大阪事業所」についてはこちらから
見学会風景
1.見学対象施設の概要
街全体でエネルギー利用の最適化を進める「柏の葉スマートシティ」は、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅、柏市北部(東京から25km)の利便性の高い地域に2014年にオープンした。
3,077世帯、9,200人が居住する地域であり、現在、東京大学、千葉大学、国立がん研究センター、ベンチャー企業、ららぽーと、分譲・賃貸マンション、ホテルなどが点在し、2030年には2万6千人の街になる計画である。
環境、エネルギー、健康は世界的な課題である。「公・民・学」の連携により、「環境共生都市」「新産業創造都市」「健康長寿都市」3つのテーマの最適化を求めながら未来を解決・創造する街づくりを目指している。日本初LEED(Leadership in Energy&Environmental Design)のプラチナを取得した街でもある。そんな興味深い施設・都市の見学を実施した。
柏の葉スマートシティ
LEED プラチナ取得都市
2.環境への取組
柏の葉ならではの豊かな自然環境を地域資源として活かしながら、「省エネ・創エネ・蓄エネ」や次世代交通システム、緑化プログラムなどの整備を通じて、災害時にもライフラインを確保し、人と環境が共存していける未来型の環境共生都市を目指している。
(1) エネルギーを効率的に活用する街
◇AEMS(エリアエネルギー管理システム)
街全体でエネルギー利用の最適化を進めるAEMS。自営送電線網の整備と拡大、機能の充実を図っている。それによって、暮らしとイノベーションを支えている。
◇柏の葉スマートセンター
地域のエネルギー運用とともに災害時のエネルギー情報を管理する拠点。住宅や商業施設、オフィスなどの電力使用状況を見守り、暮らす人や働く人により効果的
な省エネのための情報を配信する。また災害時に電力の融通も担う。
◇分散電源による電力を地域で融通しあうスマートグリッド
太陽光発電や蓄電池(リチウムイオン電池)などの分散電源エネルギーを街区間で相互に融通するスマートグリッドの運用を開始。自営の送電線を使い、電力会社の電
力と分散電源を併用しつつ、電力を街区間で融通しあうことで街全体の電力ピークカットを実現した。平日は、オフィスでの電力需要が高まるため「ららぽーと柏の葉」から「ゲートスクエア」に電気を供給する。
商業施設での電力需要が高まる休日は「ゲートスクエア」から「ららぽーと柏の葉」に電気を供給する。これらの取り組みにより地域レベルで約26%の電力ピークカットを達成、省エネルギー・CO2削減を実現した。
◇災害時スマートエネルギーシステム
再生可能エネルギーや蓄電池を利用しながら、災害時に効果的にエネルギーを管理。それによってBCP(事業継続計画)、LCP(生活継続計画)対応を可能にしている。
ゲートスクエア内では停電時にも通常時の6割程度の電力が供給され、3日間の維持が可能。また住居棟では非常用エレベーターや照明、共用部への電力供給が可能である。さらに地下水ポンプを稼働させることによって生活用水を確保出来る。
(2) 暮らしの省エネルギーを実現する街
◇HEMS(ホームエネルギー管理システム)
“エネルギーの見える化”を通じて、住民の参加意識を高めながら環境にやさしい暮らしを情報として、専用タブレットやPC・スマートフォンなどに、各世帯のCO2排出量を表示するほか、AI機能によるエネルギーの使用状況に応じたアドバイスや、省エネ達成のランキングが把握できる。また、もしもの時に住民の協力を促す節電要請機能(デマンドレスポンス)も備えるなど、災害に強い街となっている。さらに外出先から照明や空調の制御も可能である。
(3) CO2削減のためのロードマップ
快適性を高めながら、CO2削減のための長期的なビジョンを形にした 「ロードマップ」を策定した。技術の進歩を見据えながら、2030年の排出量削減率60%を目標に低炭素化への取り組みが進んでいる。
(4)サスティナブルデザイン
電力などに頼らずに自然の熱や空気を活かして、地球への負担を減らすサスティナブルデザイン。「ゲートスクエア」の各棟ではこのサスティナブルデザインとAEMS を組み合わせて、2棟で約40%、ショップ&オフィス棟単体では約50%のCO2排出量削減を達成。
熱源設備としては、空冷ヒートポンプチラー,ターボ冷凍機,ガス冷温水発生機が設けられ、各機器にて冷水・温水を生成し空調用に設けられた空調機,外調機へ供給している。熱源の制御は、ヘッダー部での往き温度や流量を検出監視し、搬送用ポンプの運転台数を制御(増段,減段)にて対応している。
空冷ヒートポンプチラー 空冷モジュールチラー
ガス冷温水発生機 ターボ冷凍機
空調設備は、ショップ&オフィス棟とホテル&レジデンス棟では異なり、
1)ショップ&オフィス棟:電気式ヒートポンプエアコン,ガスヒートポンプ
エアコン,水熱源ヒートポンプエアコン,外調機
2)ホテル&レジデンス棟:EHP,全熱交換器,ルームエアコン,空調機,外調機
で、構成されている。
電気式ヒートポンプエアコン エアハンドリングユニット
ガスヒートポンプエアコン
マイクロコジェネ発電設備 太陽光発電設備
受電設備は、東京電力より66kV3相3線50Hz常用-予備2回線方式により受電し、特高変圧器5000kVAx2台(将来4台)にて6.6kVへ降圧し負荷へ供給する。
(5)再生可能エネルギー、未利用エネルギーを活用する街
太陽光パネル・風力発電装置や、地下水・雨水の利用など、再生可能エネルギーを利用。また、生ごみバイオマス、CGS(コージェネレーションシステム)排熱など未利用エネルギーの徹底活用でCO2排出量の大幅な削減を目指している。
太陽光発電設備 光ダクトシステム
3.新産業創造への取組
(1) 最先端の人と情報が集まる街
KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)
多様な人、最先端の情報の交流から生まれるアイデアや、創造的なビジネスのための拠点となるオフィス空間「KOIL」。ベンチャー支援サポートや国内外の起業家などとのネットワーク空間となっている。
(2) 世界の研究資源が集まる街
東京大学柏の葉キャンパス駅前サテライト
「超高齢化」「次世代交通」「エネルギー創成」など東京大学の膨大な研究資産と企業をむすびつけ、新しい事業や研究領域の開拓を進める施設である。
4.健康への取り組
(1) 住民の健康増進をサポートする街
超高齢化社会に対応した街を目指して、学術機関や、市民の多彩な活動を通じて、街づくりを推進している。
(2)自分の健康状態が見える街
日々の健康状態を“見える化”する「柏の葉スマートヘルスプロジェクト」。
リストバンド型ライフレコーダーや、通信機能付き体組成計などのデジタル健康機器を、ネットワーク経由で健康データ分析システムに連携させ、パソコンやスマートフォンに利用者の健康状態を表示。運動量や消費カロリー、体脂肪率などの基礎健康データだけでなく、睡眠や活動内容など24時間の生活リズムまで細かく確認できる。
(3)健康増進プログラムがある街
豊かな自然に囲まれた柏の葉キャンパスは、ランニング、ウォーキングや散歩にも最適な場所である。
柏の葉ロードマップガイドでは、水辺やアートなど、柏の葉を楽しむランニングコースを紹介している。また、ランニングステーションもあり、着替えやシャワーにも困らない。
(4) 健康を研究する街
全ての住民が健康で元気に暮らすために、予防医学や健康増進に注目し、学術機関や市民の多彩な活動を通じて、超高齢化社会に対応したまちづくりを推進している。
5.おわりに
今回、事前に予約・段取りなどで、三井不動産株式会社 濱さま、当日の熱源・空調機械室、他をご案内頂いた三井不動産ファシリティーズ株式会社 山中さま、施設全体をご案内いただいたガイドの皆様に、大変お世話になりました。紙面をお借りして御礼申し上げます。特に参加者の皆様からは、熱源・空調機械室等を見学することは希少な経験であったため、良い勉強をしたという感想が多くきかれました。本当にありがとうございました。
以上
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