フロン類の使用見通し案を公表…国内消費量上限の大幅削減へ(産構審フロンWG)

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No.668 2020年3月

2020年2月14日、経済産業省別館3階312共用会議室に於いて、産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会フロン類等対策ワーキンググループ(以下「産構審フロンWG」と呼称)第15回会議が、公開審議で開催され、傍聴したので報告する。



機器製造事業者側に係る審議もあり、審議会場には当工業会及び会員会社関係者が多数、傍聴参加していた。産構審フロンWG席上の審議資料は、こちらの経済産業省のHPに公開されている。

今回の審議のポイントは、2018年度のフロン類国内出荷相当量の実績報告を受け、①キガリ改正の削減義務を確実に達成することを前提とした2025年、2030年のフロン類使用見通し(*1)案が示され公表されたこと、②今後の削減シナリオ及び2030年の冷媒の将来像が示されたことである。加えて、削減シナリオ実行に向けた③新たな指定製品の目標値及び目標年度の設定案の審議が行われた。

出席委員から大きな異議はなく、今回の提案内容で、法による運用検討が開始されると思われる。

*1…フロン排出抑制法に基づき、経済産業大臣がフロン類製造業者等に対して、国内で使用されるフロン類の将来見通しを示し、公表したもの。今回設定されるフロン類使用見通し案は、キガリ改正の確実な達成が前提であるため、超過することが許されない「国内消費量の上限値」の位置付けとなっている。


【審議の概要】
審議冒頭に、2018年度の出荷相当量実績が提示され、2017年度比で削減が図られたが、2020年度の使用見通し(*2)とは大きな差異が出ていることが報告された。

*2…2015年のフロン排出抑制法改正時に策定した2020年度の将来見通し。

  図1:フロン出荷相当量の推移(産構審フロンWG公開資料より)



フロン類使用見通しは、国内消費量(生産量+輸入量-輸出量)の将来見通しであり、その数量を正しく管理する必要がある。モントリオール議定書では、「承認された技術によって破壊された量」は「生産量から除外」されており、MOP30にて「承認された技術」が決議されたため、今後「破壊数量確認手続きを整備」し、経産省令制定と並行して、「破壊された量は生産量から除外」に向けた具体的運用を検討して行くことになっている。

1.2025年、2030年のフロン類使用見通し案

フロン排出抑制法に基づくフロン類の使用見通しは、5年おきに策定し、必要があるときは改正を行うことになっている。現行の使用見通しは2015年に策定したため、キガリ改正を勘案していない。

今回、キガリ改正の削減義務を確実に達成することを前提とした2025年、2030年の新たな使用見通し値が提示され、今後の削減シナリオが明示された。それによれば
1)2020年度使用見通し値を、基本的運用割当てによる実績値に上方修正
 (既定4,340万t-CO2⇒申請基準値4,908万t-CO2)
2)2025年度使用見通しを、キガリ改正の削減義務達成のための見通し値に大幅削減
 (既定3,650万t-CO2⇒削減義務達成のための使用見通し2,840万t-CO2)
3)2029年度使用見通し値の見直しと共に、2030年度使用見通しを新規設定
したことである。

この削減シナリオ実行のためには、2020年~2025年期間の削減率を現行3.8%/年から10.4%/年へ、大幅な消費量削減を加速する必要があり、これが「消費量の上限」となる。


図2:今後の削減シナリオ(産構審フロンWG公開資料より)



この削減シナリオは、産構審フロンWG委員長の下、各業界団体等で構成された検討委員会にて審議検討された結果に基づくもので、当工業会も委員として参画した。CO2排出量換算値ベースである「使用量の上限」が確定(今夏以降に経済産業省HPで公表)した場合、フロン類製造業者等は地球温暖化係数(GWP値)の高い冷媒の生産供給が難しくなり、将来的に中~高GWP値の冷媒入手が困難となる可能性も考えられ、各業界全体での取り組みが急務である。



2.2030年の冷媒の将来像

2030年度の冷媒の将来像として、業務用冷凍空調機器及び家庭用エアコンは加重平均GWP値=450程度、カーエアコンは加重平均GWP値=150程度まで、グリーン冷媒化が必須であると報告があった。これは家庭用エアコンでは出荷のほぼ全数で転換が完了し、また業務用空調機器では急速に転換が進んでいるR32冷媒(GWP値=675)から、再度新しいグリーン冷媒への転換が迫られていることを示している。

2030年度の冷媒の将来像を示したことに対し、産構審フロンWG出席委員から高い評価を得たが、低GWP値のグリーン冷媒は、燃焼性が高まる傾向にあることから、国は「安全性を確認した上で可燃性冷媒をも使いこなす社会へ変化」「市中の稼働機器のサービス冷媒の新規使用量削減のための再生技術の向上等への取り組み」の周知・啓発を推進する、と意思表示があった。また関係者の取り組みの方向性が示され、相互に連携&早急な取組推進が望まれるとの内容である。



3.新たな指定製品の目標値及び目標年度の設定案

新たな指定製品の目標値及び目標年度の設定については、冷凍空調機器では下記の2分野が審議俎上であり、ビル用マルチエアコンの指定製品化、目標値及び目標年度提案については、出席委員からの異論は出なかった。

1)ビル用マルチエアコンは、2020年度中の指定製品化を目指す。
●GWP加重平均目標値=750
●目標年度=2025年度までを目指す
ビル用マルチエアコンについては、目標値を達成するため現状技術では、微燃性冷媒を使いこなす必要があり、このため冷媒の安全使用に係る機器側の安全対策及び設置現場での安全対策は、施設側・施工側との合意が不可欠である。当工業会が事務局の「ビル用マルチエアコンのステークホルダー会議」での合意形成まで、残された時間は少ない。

2)業務用一体型冷凍冷蔵機器(内蔵型小型冷凍冷蔵機器)は、国内規制法(高圧ガス保安法)での取り扱いの検討と並行して、目標値・目標年度の検討を開始し、速やかに指定製品化を行う。

当工業会会員におかれても、今後のステークホルダー会議での審議状況を注視していく必要があると思われる。


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