今回の海外駐在記は、当工業会 国際部 大井手参事の中国駐在体験(前編)をお届けします。2号にわたり掲載いたします。後編はこちら 過去記事はこちらから■
海外短信
No.669 2020年5月
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- 1. 東芝キヤリア 欧州ポーランドに新製造子会社を設立
現地生産によりローカルフィット商品をタイムリーに提供
東芝キヤリアは2020年1月21日、ポーランド中西部のグニエズノに東芝キヤリア空調欧州社を設立と発表した。新会社は空調機器や暖房・給湯機器の製造・販売をおこなう。2019年12月31日に資本金92百万ポーランドズロチ(約24億円)で、フランスモンリュエルの東芝キヤリア欧州社の100%子会社として設立、2020年末までに製造を開始する。
日本冷凍空調工業会が2019年6月に発行した「世界のエアコン需要推定」によると、欧州の空調機器市場は2016年から2018年まで年率6%以上の成長を遂げている。欧州東部や北部ではエアコンの普及率はまだ低く、最近の夏場の気温上昇もあり、エアコン需要は増加するものと見込まれている。
欧州では従来のガスやその他の燃料を用いたボイラによる暖房や給湯に代わって、空気熱源のヒートポンプ暖房・給湯機器(ATW)の販売が伸びている。こうした背景から東芝キヤリアは欧州に初めて製造拠点を設立した。これにより現在の製品を各地域の個別ニーズに適合させ、リードタイムを約3分の2に短縮する。
東芝キヤリアは今年末までにポーランドの新工場で
ATWほかの生産を開始する予定- 〔JARN, February 25, 2020〕
2. 三菱電機トレイン “2019グローバル・イノベーション・アワード”受賞
「4方向吹き出し天井カセットモデル」の革新性が評価される
三菱電機トレイン空調冷熱販売米国(METUS)は、米国ホームビルダース協会(NAHB)が主催する表彰制度の国内海外製品部門で“2019グローバル・イノベーション・アワード”を受賞した。受賞の対象となった製品は「4方向吹き出し天井カセットモデル」。高効率、多方向吹き出し、天井にマッチしたデザインおよび人感センサーなどが評価された。
授賞式は1月22日グローバル・インダストリアル・ディにラスベガスでのNAHBインターナショナル・ビィルダース・ショーでおこなわれた。審査委員は革新性、機能性、デザイン、据付性、使いやすさ、持続性、およびマーケィングなどの観点から受賞者を選定した。
三菱電機トレインのマーケティング上級役員のミシェル・ロブ氏は「我々は米国ホームビルダース協会から表彰されることをとても誇りに思う。賞が表すように我々は機能性だけを追求するのではなく、革新的で将来性のあるものを開発してきた。我々の製品がそのように評価されたことを大変うれしく思う」と述べている。- 〔JARN, March 25, 2020〕
3. 海信日立 初のセントラル空調のサービスセンターを上海にオープン
サービスレベルを向上することで市場競争力を高める
海信日立の上海支店は2020年1月12日、初のセントラル空調のサービスセンターの開所式を上海でおこなった。サービスセンターは上海モルン冷凍空調エンジニアリングと共同で設立。店舗面積は180㎡で、エンジニアリングおよびホームユーザー向けに、据付、修理、清掃、保守、および交換サービスをおこなう。
上海では中国のほかの都市に先駆けてセントラル空調が採用され始めている。海信日立は据付とサービスに重点を置き、サービスセンターを現在9か所にオープンしようとしている。ほかのサービスセンターも開業の準備に入っており、2020年末までに中国全土で20か所以上になる見込み。サービス店舗は当初、日立、海信、およびヨークVRFの3つのブランドを取り扱うが、その後ほかのブランドへも拡大していく。
既存マーケットでの競合に対応するために、海信日立は顧客へのサービスレベルを向上することでより大きな事業機会を創出していく。
〔JARN, February25, 2020〕
4. 富士通ゼネラル インドで直販体制によるエアコン販売を開始
富士通ゼネラルは1月21日、インドにおける販売子会社富士通ゼネラル(インド)を通じた直販体制により、インドでのエアコン・ビジネスを開始すると発表した。営業活動とアフターサービスを強化することにより、ブランドイメージの向上を図る。新たな販売店を活用し、また店舗もオープンすることにより、販売網を拡充し、空調機事業の拡大を目指す。
富士通ゼネラルはインドを中期的に優先度の最も高い市場と位置付けており、インド市場は富士通ゼネラル(インド)による直販体制に切り替えることにした。
同社は業務用エアコンについても販売体制を強化する。2018年12月から連結子会社としたABSエアコンエンジニアーズ社の顧客に対して、積極的な提案営業を行うことにより、空調ソリューション・ビジネスの拡大も図る。ABSは空調機システムの設計・施工・アフターサービスをおこない、更新需要にも対応する。
1月にチェンナイ近郊のマハーバリプラムにおいて販売店会議を開催し、同社の代表取締役社長の斎藤悦郎氏が直販体制による将来の展望を説明した。- 〔JARN, February 25, 2020〕
5. パナソニック ベトナムで奨学金制度をスタート
初年度は7名の熱と冷凍を専門とする優秀な学生に授与
パナソニックベトナムは、パナソニック・エアコン・トレーニング・センターにおいて、奨学金制度により7名の熱および冷凍を専門とする優秀な学生に対して、奨学生として初の認定をおこなった。式典はいくつかの学校の代表も参加して暖かな雰囲気のもとにおこなわれた。
奨学金制度は2019年に設けられたもので、パナソニックのベトナムにおける社会貢献活動のひとつになっている。科学技術に対する情熱があり、学業も優秀で、自己研さんして自国のために貢献しようとしている学生で、熱と冷凍を専門としている者を支援するものである。制度で認定された学生に対しては、卒業まで毎月350万ドン(VND)(約1万6千円)の奨学金が支給される。
彼らは奨学金を受け取るだけでなく、パナソニックの専門家によるトレーニング活動に参加することができる。さらにエアコン・トレーニング・センターでのコミュニケーション・コースにも参加することができる。センターはパナソニックとパートナーおよびビジネス関係者とのコミュニケーションの場として2019年10月にオープンしたものである。- 〔JARN, March 25 2020〕
6. ダイキンインドネシア マナド市に支店を開設
アフターサービスの充実による拡販を目指す
ダイキンエアコンディショニングインドネシアは、スラウェシ島北部のマナド市にショールームを兼ねた新たな支店を開設した。この支店はスラウェシ島では南部のマカッサル市の支店に次いで2番目となる。販売とアフターサービスをおこない、製品と補用品の倉庫を併設している。
この支店の開設によりマナドのエアコン市場でさらに大きなシェアを獲得することを目指している。インドネシアの密集度が低い地域では多くの競合ブランドも満足のいくアフターサービスができていないことから、このギャップを埋める。- 業務用エアコンの市場でVRVシステムの潜在需要は大きいので、この分野での拡販も目指している。
- 〔JARN, March 25 2019〕
7. 欧州会計監査院 “エコデザインとエネルギーラベリングは効率向上に寄与”と- 認定“法規制の遅れ”や“市場監視の限界”は課題と指摘
欧州会計監査院(ECA)は最近、特別レポートを発行し、欧州のエコデザインとエネルギーラベリングがエネルギー効率の向上に寄与していることを認めた。ECAレポートは、EUのエコデザインとエネルギーラベリング方針は、消費者の意識を高めると共に、住宅と産業用製品のエネルギー消費を減少させるという当初の目標を達成してきていると結論付けた。一方で、レポートはいくつかの欠陥を指摘しており、主なものとしては法規制の遅れや市場監視の限界である。委員会の‘包括対策’方式も課題のひとつとなっており、このやり方では実行可能な対策がいくつかあってもすべての対策が整うまで実行を待たされるという欠点がある。
2050年の「気候中立」は、エネルギー効率についての対策を欧州グリーンディールの中心に据えなければ達成できない。欧州の冷凍空調産業の団体である欧州エネルギー・環境パートナーシップ(EPEE)は、市場における競合を生かしつつ、欧州の環境課題に対応するように、エコデザインとエネルギーラベリングの要求事項の向上に力を入れている。市場の監視と情報の共有が公平な市場創出の元となる。適正な競争と選択の自由が欧州グリーン化の基本原理となっている。- 〔JARN, February 25 2020〕
8. フランスにおけるヒートポンプ 2019年販売台数が100万台を超える
ヒートポンプ暖房・給湯機器(ATW)は前年より83%の増加
フランスヒートポンプ協会の会長であるエリック・バタイユ氏が「2019年フランスでのヒートポンプの販売台数が100万台を突破した」と発表した。これまでの最高記録となっている。
フランスの冷凍空調産業の団体であるUniclimaの2019年データによると、ヒートポンプ暖房・給湯機器(ATW)の販売は176,220台に達し、前年より83%の増加となった。新築よりもリフォーム市場で伸びが速く、リフォームでは性能の悪いこれまでの暖房システムを代替してATWが採用されることが多くなっている。
ヒートポンプ給湯機の販売も116,929台となり前年より13%の増加であった。
シングル・スプリットとマルチ・スプリットを合わせた空気熱源ヒートポンプ(ATA)の販売は728,433台と前年より27%の増加であった。- 地中熱源ヒートポンプ(GSHP)は伸び悩んでいる。しかしフランス政府が出した新しい補助金制度ではGSHPに対する予算が最も大きくなっており、2020年の販売数量が注目されている。
- 〔JARN, February 25 2020〕
9. ハネウェル 不燃性・低GWP冷媒ソルスティスN15(R515B)を発表
チラーおよびヒートポンプ用としてR134aを代替
2020年の米国空調冷熱展(AHR Expo)でハネウェルは、チラーやヒートポンプに使われているR134aの代替として、新たにA1不燃性・低GWP冷媒ソルスティスN15(R515B)を発表した。今年中に発売の予定。ソルスティスN15はGWPが299であり、環境に優しく、エネルギー効率も高い。効率やGWPの問題で長期的な解決策となっていないほかの高GWP冷媒に対して、安全な代替冷媒となっている。
ソルスティスN15はコンプレッサーメーカーのリーダーであるダンフォスに採用され、空調用の空冷、水冷チラーの新型圧縮機ターボコルTGS490に使用されている。この製品は2020AHR Expoにおいてグリーンビルディング部門でイノベーション・アワードを受賞している。
ソルスティスN15のプレゼンテーションをする- ハネウェルのクリス・ラピエトラ副社長
- 〔JARN, March 25, 2019〕
10. 中国 エネルギー高効率化の強化を図る
低効率機は市場から一掃される見込み
中国ではエネルギー節約と温室効果ガス排出削減の目標を達成するために、2020年1月6日、国家市場監督管理総局(SAMR)と国家標準化管理委員会が告示2019-No.17を発表した。32の国家標準を発令し、これには‘GB21455-2019:ルームエアコンに対するエネルギー効率最低許容基準とエネルギー効率グレード’が含まれている。2020年7月1日から施行される。
新たな基準ではエネルギー効率の評価方法をインバータ機と非インバータ機で統一し、冷房専用機にはSEER、ヒートポンプにはAPFを採用している。またエネルギー効率グレードの区分数を削減し、これまでのグレード1の効率範囲はグレード2となっている。最も効率の高いグレード1では、国際的なトップレベルであるAPF5.0をカバーしている。
新基準では効率の低いルームエアコンを一掃しようとしており、市場の約45%は除かれるものと推定されている。グレード4および5に区分されていた非インバータ機は販売を縮小され、2022年には市場から消えることになっている。さらにインバータ機であってもグレード3に区分される製品は販売できなくなる。
〔JARN, February 25, 2020〕
11. 中国からのルームエアコンの輸出台数 2019年は前年比4.8%の減少
米国との貿易紛争および中国市場の構造的な問題と見られる
中国税関の輸出データによると、2019年11月の中国からのルームエアコンの輸出台数は240万台のレベルとなり、前年同月比で34.7%の減少となった。金額ベースでは33.8億元(約514億円)で22.8%の減少。いずれも年間で最大の落ち込みであった。
2月17日、中国家電リサーチインスティチュート(CHEARI)と中国家電製品産業情報センターが共同して発表した2019中国家電製品年間レポートによると、2019年の中国から輸出した家電製品の輸出総額は3,034億元(約4兆6,100億円)で前年より0.9%の増加であった。
同レポートによるとルームエアコンの2019年の中国からの輸出は減少傾向であった。2019年中国からのルームエアコンの輸出台数は5,846万台であり、前年比4.8%の減少であった。2020年においても6,000万台を切るものと見込まれている。減少は米国との貿易紛争および国内市場での構造上の問題と見られている。- 〔JARN, February 25, 2020 and March 25, 2020〕
12. アフリカのエアコン市場 2019年は高い伸びを示す政情と- 経済が比較的安定していたことが要因
12億人以上の人口を有するアフリカは、空調機市場としても世界で最大の熱い大陸である。2019年の天候は前年とほぼ同じで、気温はそれほど高いわけではなかった。しかし空調機の販売については熱さを増している。
2019年、北アフリカのリビア、および西アフリカのコートジボワール、ガーナ、ナイジェリアでの空調機の販売はすべて増加した。ナイジェリアでは暑かったことと経済も好調であったことにより空調機市場が急速に増加した。南アフリカにおいても2019年、比較的政情と経済が安定していたため市場は拡大した。
アフリカのエアコン市場はまだ黎明期であり、エアコンは国によってはまだ贅沢品と見られている。インバータ機は比較的高いため、構成比では10%以下となっている。- 中国税関のデータによると中国からアフリカへ輸出した台数は2019年400万台に達し、32%の高い伸びとなっている。
アフリカのエアコン市場の推移 (JARN database)
〔JARN, February 25, 2020〕
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