前回に引き続き、当工業会 国際部 大井手参事の中国駐在記(後編)をお届けします。2号にわたり掲載いたします。前編はこちらから 過去記事はこちらから■イ
海外短信クローズアップ
No.671 2020年8月
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安全性で対応の分かれたケマーズとハネウェルの冷媒開発戦略
2020年2月米国フロリダ州オーランドでの2020米国空調冷熱展(AHR Expo)でJARNはケマーズとハネウェルのブースを訪ね冷媒の開発戦略をインタビューした。冷凍空調は微燃性冷媒の方向に進むと考えるケマーズに対し、ハネウェルは不燃性に重点を置いており、安全性で対応が分かれている。
■ケマーズ:オプテオンXL41は低GWP低コスト
ディエゴ・ボエリ副社長とジョセフ・マーティンコ事業部長にオプテオンXL41 (R454B)についてインタビューした。
インタビューに答えるディエゴ・ボエリ副社長(左)
とジョセフ・マーティンコ事業部長(右)
オプテオンXL41の特徴
オプテオンXL41はハイドロフルオロオレフィン(HFO)をベースとし、ODPはゼロ、GWPは466である。R410Aの代替であり、住宅用エアコン、業務用エアコン、チラーなどの新規製品向け冷媒として開発された。性能はR410Aと類似しており、能力、効率はともに向上している。微燃性(A2L)に区分される。
市場評価
2016年の発表以来、オプテオンXL41(R454B)は冷凍空調機器メーカー大手に採用され、性能の良さを示している。2018年10月ジョンソン・コントロールズはR454BをヨークYLAAスクロールチラーに採用し欧州で販売した。容量は190~530kWである。2018年12月にはキャリアがR454Bを採用し、住宅用ダクトタイプエアコンと業務用小型エアコンを北米で2023年から販売する。2019年5月にはイタリアに拠点を持つ三菱エレクトリック・ハイドロニクス&ITクーリング・システムズ(MEHITS)が欧州でマルチスクロールチラーとヒートポンプ向けにオプテオンXL41を採用した。
規制
オプテオンXL41の大きな強みはGWPが466と低いことである。米国ではカリフォルニア州や他の州で、早ければ2023年から当該州で販売される新規のエアコンについては、エアコンの製造者にGWPが750以下であることを要求する規制が提案されている。欧州ではF-ガス規制としてF-ガスは段階的に大幅削減される。すでにR404A /R507Aの代替はGWPが500以下であることが要求されている。これらの規制により市場は低GWPへと向かっており、XL41の採用はさらに増えるものと期待している。
訓練と教育
オプテオンXL41を使用するためには、技術者と据付業者に対する訓練と教育が必要となる。このニーズに対応するためにケマーズはシステムの製造業者、冷凍空調の専門家、及び冷凍空調の関係者に冷媒の微燃性(A2L)に焦点を当てた教育をインディアナポリスのオプテオン教育センターで実施している。またケマーズのサービス組織では、システム製造者を対象に、可燃性冷媒の輸送、取扱い、準備などの相談や現地での準備を数年にわたって行っている。
市場予測
ケマーズは冷凍空調産業が微燃性冷媒の方向に進むものと確信している。これは現時点では将来もっとも確からしい選択肢である。オプテオンXL41を含めてこうした冷媒を安全に使用するために、UL60335-2-40:‘家庭用及びこれに類する電気機器の安全 パート2-40:電動ヒートポンプ、エアーコンディショナー、及び除湿機の個別要求事項’が要求される。米国では米国国家規格協会(ANSI)と米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が、標準15:‘冷凍システムの安全基準’との最終調整を行っている。
2023年にカリフォルニア州ではエアコンに使用する冷媒にGWPについて規制をすることが計画されている。このためキャリアはオプテオンXL41を採用した住宅用及び小型業務用エアコンのダクトタイプを北米で発売する計画である。こうした波に乗って、ケマーズはR454B及びその他のオプテオン低GWP冷媒の販売を伸ばしていく。
■ハネウェル:重点は冷媒の安全性
クリス・ラピエトラ副社長にソルスティスシリーズ冷媒についての開発戦略をインタビューした。
インタビューに答えるクリス・ラピエトラ副社長
ソルスティスN15
ハネウェルは2020AHR Expoで新たにソルスティスシリーズ製品:N15(R515B)を発表した。ソルスティスN15は不燃性(A1)であり低GWP冷媒である。R134aの代替としてチラーやヒートポンプに使用される。今年中に発売の予定。GWPが299と低いことにより、環境に好ましく、エネルギー効率も高く、高GWP冷媒の安全な代替品となっている。安全基準やビル規制により微燃性(A2L)や燃焼性(A3)冷媒の使用が制限されている場所では、不燃性であるR134aの代替として、チラーやヒートポンプの製造者はソルスティスN15をすぐ使うことができる。
ソルスティスN15はR1234zeと類似の設計であるため、製造者(OEM)にとって、不燃性(A1)と微燃性(A2L)の両方に対応する柔軟な長期的解決策となる。ソルスティスN15はダンフォスの新型ターボコルTGS490圧縮機に採用され、空調用途に空冷と水冷の双方で使用されている。この製品は2020AHR Expoのグリーン・ビルディング部門でイノベーション・アワードを受賞している。
ソルスティスN41
ソルスティスN41(R466A)は不燃性(A1)であり、GWPは733である。GWPが
2,090であるR410Aの代替である。ルームエアコン、パッケージエアコン、及びVRFやヒートポンプなど業務用空調機に適している。
VRFシステムでは、オフィスビル、ホテル、及び病院などで、ビルの内部を多量の冷媒が循環するので、冷媒の安全性が重要なポイントとなる。N41は米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)の定める不燃性(A1)冷媒として設計されており、他のR410A代替冷媒候補よりも優れている。N41はヒートポンプにも採用される。ラピエトラ副社長によると、実際に米国の北部でヒートポンプとしてR410Aよりも高い効率を示している。
不燃性であるために、N41は燃焼リスクを緩和するための追加コストを発生しない。R410Aとの類似性によりN41は技術者の訓練や装置の変更も必要としない。商業化するためにハネウェルはN41のフィールドテストを実施しており、世界のエアコン製造業者15社からデータを収集している。
「我々は安全な特性をもつものでさらにGWPの低い冷媒を見出すために開発投資を継続している」とクリス・ラピエトラ副社長は述べている。実際にハネウェルはN42を開発しており、これはN41よりもGWPが低い冷媒となっている。
〔出典:JARN April 25 2020 & May 25 2020〕
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