今回の海外駐在記は、当工業会 国際部 波多野次長のインド駐在体験(前編)をお届けます。編集しながらだいぶ吹き出してしまいましたが…これか
インドの空調産業、新型コロナはむしろ好景気!? ~海外短信クローズアップ~
No.672 2020年9月
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インドの空調機産業
現地企業を優先採用することによって「自立したインド」を実現
新型コロナウイルスはむしろ好機
インドでは新型コロナウイルスの感染予防としてのロックダウンが5月31日まで延長された。緩和措置も取られ、5月18日からはほとんどの地域でRACや耐久消費財の販売が許可された。しかし客足の戻りは悪く、製造業者は今年の販売は前年を下回るものと見ている。ロックダウンの影響で夏のピークに販売はほぼゼロであった。
ミドルクラス従業員の大多数は、特に情報産業の分野においては、長期にわたって在宅での勤務となっている。彼らはオフィスで空調の快適さに慣れているため、RACの潜在的な顧客といえる。また自宅に留まるため映画やショッピングで金を使うこともないので経済的に余裕が生じている。家庭部門での消費は増加するかもしれない。
最も重要なことは、中央政府が経済を再起動させ、製造業におけるスローガン「自立したインド」を実現するために20兆ルピー(約28兆円)という高額な経済刺激策を発表していることである。インドのRAC産業はかなりの部分を輸入に依存している。RACの製造業者を含め、大企業から中小企業まで、製造業者はこの経済パッケージを歓迎している。ジョンソンコントロールズ日立空調・インドの会長執行役員で家電・機器製造業協会(CEAMA)の副会長であるグルミート・サイ氏は、耐久消費財の多くの製造業者に呼応して、現地企業を優先採用することによってこのスローガンを実現する計画を発表した。
ジョンソンコントロールズ日立空調・インド
グルミート・サイ会長執行役員
「世界は予測が付かない大きな市場危機に直面している。我々はモディ首相のインド経済を自立に向かわせるという目標に賛同する。現時点において「自立したインド」というスローガンは良い考えであり、これにより国内の製造業は輝きを得て、世界のサプライチェーンの重要な部分を担うことになるだろう。発表された経済パッケージはインド経済に新しい活力を注ぎ、成長をけん引する。これにより零細企業や中小企業(MSMEs)が育つことになる。これは現下の急務である。零細企業や中小企業に対するローン3兆ルピー(約4兆円)は事業を継続させるために待たれているものだ」と同氏は述べている。
「世界はサプライチェーンの崩壊に直面している。ジョンソンコントロールズ日立空調は現地企業の優先採用に向かって作業をしている。ハイリー・エレクトリカル・アプライアンス・インディアは我々のグループ会社であるが、アーメダバードに圧縮機工場を持っている。我々は絶えず彼らと連絡を取り合ってインドにおける圧縮機の生産量を最大にしようとしている。これにより我々の製造工場においても現地品を調達することができる」と同氏は述べている。
その他のRAC製造業者も同様の戦略のもとに動いており、インドを製造立国にしようとしている。インド政府は国内の製造業者に操業を脱中国にシフトすることを強く要請しており、インドに製造拠点を作る際にはインセンティーブを与えている。
韓国の多国籍企業であるサムソンはノイダ工場での生産を限定的に再開した。今後徐々に生産数量を上げていくと同社は述べている。ウッタル・プラデーシュ州の政府は限定的な操業を許可しており、工場の生産能力の25~30%といわれている。州政府は企業に作業標準の遵守を要請している。作業者の健康と安全を確保し、新型コロナウイルスの感染予防を図るために衛生管理を徹底しなければならない。
政府は企業に最大3,000人規模での生産開始を許可しているが、ほとんどの企業で就業者の数はこれ以下で再開しており、作業環境が整い次第徐々に生産能力を上げようとしている。
インドのRAC業界は新型コロナウイルスによる難局をむしろ好機と捉えている。
〔出典:JARN June 25 2020〕
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