今回は前回に引き続き、ダイキン工業今泉様によるトルコ駐在記(後編)をお届けします。ヨーロッパとイスラム圏を結ぶ上で重要な役割を果たす国、トルコ!前編(
海外短信クローズアップ
No.678 2021年7月
高い成長が期待されるインドの冷凍空調産業
■この夏に2桁の成長が見込まれるインドのエアコン市場
今年の夏、インドの主要なエアコン製造業者は、金属材料や圧縮機の輸入価格の高騰により、ルームエアコンを5~8%値上げすることにしている。それでも販売については高い伸びを見込んでいる。繰延需要、うだるような夏、そして在宅勤務の継続。これらが冷房製品の需要を押し上げるものと予想し、主要メーカーは2桁の成長を見込んでいる。
製造業者は小さな町でも相当な販売の伸びを期待している。これらの地域はパンデミックの影響をあまり受けていないこと、モンスーンは例年並みの予報になっていること、さらに政府の地方電化政策により電力が確保されていることが背景となっている。インドのRAC総需要は年間700万台から750万台と予想され、この市場で15社以上が競っている。
ACREX展に集うインドの主要エアコン製造業者
■経済回復の軌道に乗る
国際通貨基金(IMF)はインドの2022会計年度における成長率を、COVID-19の再流行がインドの経済回復を脅かしているにもかかわらず、1月に予測した11.5%から12.5%へと上方修正した。IMFはインドを経済成長が最も早く、2020年のCOVID-19の流行から2桁の回復を記録した唯一の国と位置付けている。しかし現在国内で感染拡大している第2波により、ムーディーズは成長率の予測を1%ポイント下げている。
インドの経済成長にとって雨季は常に主要な要因となっている。良好な雨季は大豊作をもたらし、農家の購買力を高める。農家は労働力構成比で50%以上を占めている。また暑い夏は特にインドの空調機産業にとっては好ましいものである。今年は雨季と夏の両方の要因が良好な予測となっている。民間のスカイメットだけでなく政府の組織であるインド気象局(IMD)も例年どおりの雨季のあとに厳しい夏を予報している。3年連続して良好な雨季が見込まれるが、こうしたことは稀である。
■エアコン製造業者で共有する成長のロードマップ
ダイキンインド社のCEOで冷凍空調製造業者協会(RAMA)の会長であるカンワルジート・ジャワ氏がインドの空調産業のロードマップを述べている。「2020年にCOVID-19の感染拡大によりサプライ・チェーン、物流、原材料価格などで大変な障害が生じていたにもかかわらず、空調産業はかなりの販売を記録した。我々はいまや新たな機会をとらえることを見据えている。インド及び世界の顧客に対して世界でもトップクラスの製品を製造するために新たな生産設備を建設し、研究開発に投資する。産業界はそのための詳細な計画を立てている。産業界はインド政府からチャンピオン分野と認定されている」
■インド政府が生産連動型インセンティーブ(PLI)スキームを発表
インド政府が空調機を対象にした生産連動型インセンティーブ(PLI)スキームを発表すると、製造業者は4月1日から発効したインセンティーブに対して関心を表明した。産業界の情報筋によると6社程度がPLIの利用に興味を示している。
PLIスキームは現地調達率を現在の25%から75%に引き上げ、今後7年間で年間2400万台の生産増加を目標にインド政府が補助金を付与するものとなっている。
「過去20年間、インドの空調産業は数千台の生産から始まって2020年に700万台に達するまで長い道のりを歩んできた。しかしながらコンポーネントのエコシステムは開発されなかった」とエアコン部品の大手製造業者であるアンバー・エンタープライズの会長であるジャスビール・シン氏は述べている。「今日我々は継続して圧縮機、アルミ、銅管、モーター、プリント基板、及びバルブなどの重要な部品を大量に輸入している。700万台のエアコンの内、およそ500万台はインドでの現地調達率はわずか25%である。PLIは今後7年間で現地生産比率が25%であるエアコン500万台を現地生産比率を75%まで引き上げたエアコンを2400万台生産するという複合効果を期待している」と述べている。