トルコが親日国である理由ご存じですか?「私の海外駐在記~トルコ~後編」ダイキン工業株式会社 今泉仁志

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No.678 2021年7月

今回は前回に引き続き、ダイキン工業今泉様によるトルコ駐在記(後編)をお届けします。ヨーロッパとイスラム圏を結ぶ上で重要な役割を果たす国、トルコ!
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1.イスタンブールでの日常生活は日本よりよい条件
日本人の海外駐在の場合、日本にいる時より遥かに条件の良い住宅に住むことができるケースが多いと思います。私の場合、外国人向けの高層マンションに住んでいました。単身赴任でしたが部屋の広さは約200㎡で温水プール、フィットネスクラブ、室内ゴルフ練習場、ラウンジなどの設備が併設されていました。地下にはマンションから直結の大型ショッピングセンターもあり、日用品は手軽に入手できるとても便利な環境でした。



写真1:私がすんでいたアパート
53階建てのイスタンブールで一番高い建物です




イスタンブールの場合、ヨーロッパ側とアジア側で家賃相場に倍以上の開きがあります。同じような条件であればアジア側の家賃が遥かにお得です。ただ、日本人学校や日本食レストラン、外国人向けスーパーなどがヨーロッパ側に集中していたため、家族帯同者はヨーロッパ側に居住するケースが多かったようです。


2.日本食レストランでは松茸も味わえます
イスタンブールには多くのレストランがありますが、日本食レストランはわずか2件しかありません。そのため、日本食レストランは連日、日本人客で大繁盛です。両方のレストランとも経営者は日本人なので本格的な日本料理が味わえます。テイクアウトや出前にも対応してくれるため、単身赴任の私にはとても有難い存在でした。それから、トルコでは秋になると松茸が収穫されます。日本食レストランではとてもリーズナブルな価格で松茸のフルコースが楽しめます。


3.食料品購入の際はご用心
トルコにはスーパーが併設された大型ショッピングセンター、地場大手や外資系のスーパーが数多くあり大概の日用品は入手できます。ただ、困るのは食料品です。スーパーにも多くの肉や野菜、果物が並んでいるのですが、必ずしも安心して買えるとは限りません。賞味期限の切れた牛乳やヨーグルト、半分腐った野菜や果物、怪しげな肉、異臭を放つ魚などを平気で販売しています。多くの日本人が一度や二度はお腹を壊した経験を持っていると思います。また、商店街やバザール、屋外マーケットが街中にあり、そこで新鮮な野菜や肉、魚を手軽に入手することができます。


一方、日本の品物は殆ど手に入らないのが悩みの種でした。一般のスーパーで入手可能な品物と言えば醤油と海苔くらいです。日本食レストランが経営している小さな食材店があり、そこではみりん、だしの素、うどん、そばなどは何とか手に入れることができますが、品数は限られますし値段もとても高価です。そのため、私は日本に帰国するたびに大量の食材をハンドキャリーで持ち込んでいました。焼酎や各種調味料、インスタントラーメンなど手当たり次第にスーツケースに押し込みました。イスラム教のため豚肉もまったく手に入らないので、食材確保には本当に苦労させられました。


4.現地での日本人会の活発な活動・世代を超えた交流
イスタンブールでは日本人会の活動がとても活発です。ビジネスに直結する活動から日本人学校の運営、日本人向けの大規模イベント企画、スポーツ・趣味といった分野まで多様な活動を行っています。これらの活動はすべて会員による手作りの企画・運営で、私も日本人向けのイベントとして夏のボスポラスクルージングを担当(参加者400名、クイズ大会や船上イベントを企画)、ゴルフ部にも所属し冬のアンタルヤ合宿(地中海沿岸のゴルフリゾートです)に参加、出身大学のOB会も設立し年7~8回の飲み会を開催するなど会社・世代の壁を越えた交流を楽しんでました。

写真2:アンタルヤゴルフ合宿
冬でも温暖で最高です

写真3:大学OB会の様子
周りのトルコ人も交えて大盛り上がり




5.世界最悪とも言われる交通渋滞
イスタンブールの交通渋滞は尋常ではありません。わずかな距離を移動するのにも長い時間を要します。イスタンブールは人口約1500万人の大都市ですが鉄道や地下鉄などの公共交通機関が未発達です。人々は自家用車やタクシー、路線バス、各企業がチャーターするシャトルバス(朝夕の出勤時には大量のシャトルバスが出動)を利用し通勤通学をします。そのため朝夕の通勤時間帯は街中に車が溢れ返ります。さらに悪いことに、ヨーロッパ側とアジア側を結ぶボスポラス海峡にはわずか3本の橋と1本のトンネルしかなく、そこがボトルネックとなり市内全体に激しい渋滞をもたらします。私の場合、道が空いていれば通勤時間は約20分でしたが、酷い渋滞に掴まると2時間以上かかることもざらでした。そうしたことから、商用でアポイントを取っても時間通りに到着することは殆ど不可能です。時間に余裕をもって出発すれば1時間前に到着、逆の場合は1時間の遅刻といった事態が頻発します。そのため、相手がお客様であっても時間にはとても寛容でした。


写真4:ボスポラス海峡大橋手前の渋滞の様子
橋の手前は大渋滞です



6.英語通じない?!言葉の壁
イスタンブールでは英語は殆ど通じません。多くの日本企業は英語を使える人を採用しているため問題は少ないのですが、日常生活ではとても不自由を感じます。スーパーや商店、多くのレストラン(一部の高級レストラン除く)など殆どがトルコ語オンリーです。私の場合、最低限必要と思われる言葉をトルコ語のメモ(例えば床屋であれば「2センチカットして下さい」など)にして持ち歩いていました。数字を覚えるのも大変でしたので、スマホの計算機をコミュニケーションツールにしていました。なかでも特に困るのは病院です。医師は英語を使える人が多いのですが、受付や看護婦さん、薬局の店員さんなどは英語を使えない人が多くとても苦労しました。そのため、病気になっても余程のことがない限り病院には行かず家で我慢していました。どうしようもない時にだけ、会社のトルコ語を使える日本人スタッフに同行してもらうという情けない状況でした。



7.トルコ流、奇妙なルール
イスタンブールにはゴルフ場が2か所しかありません。一つはメンバーシップコースで、もう一つはパブリックコースです。そのためゴルフ場はいつも超満員で予約を取るのも一苦労です。メンバーシップコースは日本人の多くがメンバーになっていますが、ここのゴルフ場には奇妙なルールが存在します。それは「メンバーでない者は生涯6回までしかプレーできない」というルールです。ゴルフ場が生涯6回をどのようにチェックしているのかは定かではありませんが、メンバーでない日本人の中には複数の偽名を使ってゴルフをしている人もいました。



8.世界三大料理と呼ばれる、トルコ料理
トルコ料理は世界三大料理と称されますが、特に有名なのがケバブです。ケバブはトルコ語で「焼いた肉」の総称で種類も多岐に渡ります。日本ではドネルケバブが有名ですが、子羊肉を焼いた「ピルゾラ(ラムチョップ)」、鶏の手羽を焼いた「カナッチ」、羊肉をハンバーグ風に焼いた「キョプテ」など様々な種類があります。私のお気に入りはピルゾラとカナッチで両方ともビールのおつまみには最高です。トルコの人々はケバブが大好きで、どこのケバブレストランも食事時は大盛況してます。

写真5:一般的なケバブの盛り合わせ
数種類のケバブと野菜やご飯が付いてます



ケバブ以外にも多くのトルコ料理がありますが、トルコ人に人気があるのはひよこ豆やトマトのスープ(トルコはトマト栽培がとても盛んで、スーパーには多くの品種のトマトが並んでいます。カゴメのトマトケッチャプの原料にも使われているそうです)、シミットと呼ばれるごまパン(トルコ人はパンが大好き)などです。トルコ東部にガジアンテップという都市があるのですが、そこの郷土料理である子羊の骨を使ったベイランというスープも美味で、飲んだ後の締めには最高です。

私がトルコ料理で忘れることができないのは「いぼガレイの煮つけ」です。トルコでメジャーな魚といえば黒鯛、すずき、イワシなどですが、いぼガレイは別格です。見た目のグロテスクさとは裏腹に味は最高です。もう一度トルコ料理で食べたいものは何かと聞かれたら躊躇なくこの料理を選びます。



写真6:いぼガレイの煮つけ
バター風味の濃厚なソースと爽やかな白身の味がマッチして最高です




9.トルコはビールとワインの一大生産地
トルコはイスラム教の国ですが、アルコールの制限は比較的緩やかです。スーパーでも普通に購入できますし、多くのレストランでも提供されています。そうした背景からトルコには多くのビールメーカーやワイナリーがあります。ビールではエフェスやボモンティーといったブランドが有名で、現地の多くの日本人が愛飲していました。また、ワインも有名でトルコは知る人ぞ知るワインの一大生産地です。手頃な値段でフランスやイタリア産と比べても遜色ないワインが手に入ります。現在、日本とトルコでEPA交渉を進めていますが、協定が締結されればトルコのワインが日本にも輸入されるのではないかと思います。

写真7:トルコビールとケバブ
 相性抜群です




4.最後に
私がトルコに駐在していた4年間はネガティブな出来事の連続でした。アタチュルク空港(旧イスタンブール空港)や外国人向けナイトクラブでの銃乱射事件に代表されるイスラム国による爆弾テロの多発、多数の一般市民が犠牲となった軍部によるクーデター未遂事件、エルドアン大統領の独裁強化を目指した大統領制への移行、トルコショックによる通貨暴落と年率25%を超える極度のインフレなどを経験し、最後の止めはCOVID-19でした。私自身、クーデター未遂事件の際には深刻な命の危険を感じましたし、爆弾テロ多発時には日本では学べないようなリスク回避策の知識も得ることができました。

ただ、苦しいことが多かったトルコの4年間でしたが、トルコを含む合計8年間の海外生活は、自身にとって二度と経験できない貴重なものでした。海外での多くの人との出会いや体験は忘れられない一生の思い出としてとして私の心に深く刻み込まれています。


以上

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