2022年度 省エネ大賞
省エネルギーセンター会長賞
パナソニック株式会社 空質空調社

印刷

No.689 2023年3月

製品・ビジネスモデル部門
人も空間も健やかにする『新呼吸エアコン』エオリア 2023LXシリーズ




写真1:表彰式


1.はじめに
昨今のライフスタイルの変化により、在宅時間の増加でエアコンの使用時間が延びている。その中でエアコンの基本性能である省エネ性と快適性に加え、お部屋の「空気の質」へのニーズが急速に高まってきている。


エアコンは家庭で電力を多く消費する製品のため、より一層高い省エネ性と快適性が求められており、APF(通年エネルギー消費効率)といった機器の効率化に加え、実使用環境下で快適性と省エネ性を両立させるAI運転技術が開発されている。

また、人が一日当たりに摂取するモノの重量比をみると飲み物が8%、食べ物が7%に対し、呼吸により吸込む空気は83%にもなる※1

更にそのうち在宅時に摂取する「室内の空気」は約57%を占めている。この事からも、住宅内の空気環境の改善は重要であり、健康で快適な暮らしの実現にとってエアコンが果たすべき役割は非常に大きいと言える。


当社では「健康で快適な空気と暮らそう」というコンセプトのもと、快適性に加え、お部屋の空気やエアコン内部の清潔性にこだわって開発を進めてきた。

2011年には、圧縮機からの排熱を暖房の霜取り運転に活用し、暖房時の快適性を向上させる「エネチャージシステム」を搭載した。

2020年には、その排熱を冷房時にも活用し、安定運転時の省エネ性と快適性を向上させた。

また、2008年には、反応性の高いOHラジカルを発生させ浮遊する有害物質や付着臭などを分解するナノイーを空質改善デバイスとして搭載するなど、独自技術の進化により快適・健康な空気づくりを行ってきた。


2021年には冬場の乾燥時でもお部屋の湿度を快適に保つことのできる給水不要の加湿機能を搭載し更なる快適性の改善に取り組んできた。


本稿では、冷暖房と空気の清潔性や快適性に対し更なるこだわりをもって進化を遂げた、2022年11月発売のルームエアコン「エオリア」LXシリーズの「快適」「健康・清潔」機能について紹介する。



2.快適機能の進化

在宅時間が増加する中、エアコンの省エネ性と快適機能の重要性は一層増している。

当社はこれまでも、エネチャージを活用した「極上冷暖房」で、冷房時には、「快速制御」で猛暑でも素早くお部屋を冷やし、「エネチャージシステム」と「換気・除湿ユニット」により、省エネでサラッとした快適空間と新鮮な空気の入れ替えを実現。

暖房時には、足元から暖めながら、霜取り中でも暖房が止まらないノンストップ暖房により室温と湿度のキープを実現して快適性を向上させている。

また、「エオリアAI」では、センサーの検知内容、運転履歴などを分析・学習し、運転内容を最適化することにより、自動で無駄なく快適環境を提供可能にしている。


本機種ではさらなる快適性の向上に向け、「長時間の使用にも対応できるストレスフリーエアコン」をコンセプトとし、当社がこれまで培ってきた圧縮機や熱交換器、ファンなどの基幹要素技術に加え、快適性と清潔・清浄性の向上を目的とし「加湿・除湿・換気システム」を改良し、省エネ性と快適性の更なる進化を目指し開発をスタートした。


今回、お客様のライフスタイル変化による様々な使用状況に対応すべく、給気換気だけでなく、排気換気も行えるエアコンを開発した。(図1)


図1:給気と排気による換気イメージ




この換気を実現するべく開閉弁式新換気ユニットを新規開発した。

また、換気運転時に発生する騒音の低減と換気風量の増大を両立させるべく室外機に「大風量給排気システム」を搭載し、お部屋の空気の清潔性と快適性を向上することを可能にした新たな機能を開発した。(写真2)


写真2:室外機ユニット



開発当初は給気と排気の切り替えを様々な方式で検討したが、風漏れによるロスの増大や、流路の複雑化により、給気と排気ともに大風量の実現に課題があった。

そこで、給気と排気の双方で換気効率を最大化するために、独立した3つのダンパーを使って確実に気密性を確保し、効率的に流路を切り替えることができる方式を採用した。

本構成を採用した際の懸念点として、高湿度条件下でのダンパー用駆動モーターへの結露発生がある。

この懸念点を解消すべく、陽圧の領域に駆動軸を配置し、高い信頼性を確立した加湿・換気機能システムを開発した。

更に、排気マフラーの形状を最適化することにより、大風量化と静音化という、相反する要求を満足させて、更なる快適性を実現する事に成功した。



写真3:給排気切替弁



写真4:室内外切替弁


また、当社調べによると、エアコンに対する冷房の不満は84%と多く、その内容を分析すると乾燥・手足の冷えに関する不満点が27%あり、乾燥しにくい冷房機能に魅力を感じるお客様が23%存在することが分かった。

「冷房時の乾燥」「冷えすぎ防止」をキーワードとして、これに応えていく新機能を開発した。


夏場、冷房を使用した際に、長時間利用による乾燥・手足の冷えに対する市場要望への新たなるアプローチとして、新快適指標の導出を行った。

これは当社独自の新快適指標として、被験者試験を通じて得られたデータから作成した指標である。

従来の不快指数は欧米人を対象とした指数であり、不快指数で「快適」となる環境下においても肌寒く感じるというご不満の声があった。

当社では不快指数で「暑くない」となる環境が日本人にとって快適に感じる傾向があるという点に着目した。

これを独自に指標化(図2)することにより、快適と省エネの両立をはかった。

この指標をもとに熱交換器温度と風量の最適化により快適空間を実現する「しっとり冷房」制御を搭載した。


図2:新快適指標イメージ


この制御により、冷房の乾燥、冷えに対するご不満を解決しながらも、除湿量を適切にコントロールすることで従来比15%の省エネ冷房を実現。

このしっとり冷房の技術により、設定室温25℃時の人の足先末端温度が従来では26.3℃と設定室温とほとんど変わらない状態であったが、新制御では28.3℃となり快適性を維持した状態で省エネの両立(図3)を実現している。※2




図3:しっとり冷房による効果


また、除湿時の湿度に対する要望に対しても運転開始時から温度だけでなく湿度も効率的に下げることにより湿度の低下スピードを向上させた。

室内ファンの回転数と圧縮機の周波数を最適制御することで、前年モデル比約1.8倍の最大除湿量を達成し、従来の温度を下げてから湿度を下げる制御ではなく、運転開始時からしっかりと除湿を行うことで居住空間の快適性をいち早く向上させることが可能となった。

また、除湿時のパーシャル制御をさらに進化させるべく、業界最細径※3のφ4mm微細管を採用した新ハイブリッド弓型熱交換器を開発。

この熱交換器の構成見直しにより、除湿量を向上させながらもきめ細かな温湿度コントロールを実現。除湿効率を向上させつつ目標湿度到達後の冷え過ぎも抑制可能な構成とした。




写真5:φ4㎜銅管採用熱交換器


暖房時においても、いち早く快適な環境を提供すべく、生活パターンに応じた学習機能を搭載したAIチャージ機能を新開発した。

これにより、日内の時間だけでなく、曜日ごとの生活パターンも学習し、運転開始前に予備運転を実施することで吹き出し温度40℃到達時間を30%短縮、さらに、従来のおはようチャージと比べ予備運転時間を10%削減し、快適性向上と共に省エネを実現した※4

加湿スピードが有給水加湿器で各社訴求のポイントとなっているように、本製品では無給水加湿時の湿度制御においても、従来に比べて加湿スピードが1.25倍となる新スピード加湿を搭載した。

コンプレッサーの電力と加湿ヒーターの電力を随時モニタリングする制御を搭載し、室温の上昇に伴う湿度の低下を抑えるために、加湿暖房により室温と湿度を上昇させることで快適性を向上させた。

さらに、加湿機能においても排熱回収や、熱漏洩を防ぐなどの取組により効率的に水分の吸脱着を行うことで加湿量向上も実現した。



3.健康・清潔機能の進化
室内空気環境の改善には、お部屋の空気を清潔にし、エアコン内部もキレイを維持し続けることが重要である。

これまでも、反応性の高いOHラジカルを発生させる独自デバイスであるナノイーXが浮遊する有害物質や付着臭などを分解し、清潔な空間を提供してきた。

また、内部のキレイに対しては、フィルターお掃除ロボットや、熱交換器のホコリレスコーティング、防汚防カビファンといった機能に加え、ナノイーX内部クリーンで内部の清潔性を向上させてきた。


本製品では内部クリーン+排気により、内部クリーン中のエアコン内部の湿気を屋外に排気することで、お部屋の湿度戻りによる不快感を抑制した。

また、においケア+排気によりお部屋のにおいを集めると同時に室外に排出する事を可能とした。

排気+ナノイーXにより効果的な有害物質の抑制を実現した。

図4は一例として付着ニオイ(加齢臭)の低減効果を示したグラフである。

30分後の効果として、一般的な換気に比べても、換気+ナノイーXにより臭気強度を大きく低減出来ている事がわかる。

このように、汚れた空気は屋外へ排出しながら、室内へナノイーXを放出させることにより、付着物質(有害物質)の抑制効果がさらにアップでき、お客様により健康で快適な空気を提供できるようになった。※5



図4:排気換気のにおい低減効果



以上の構成により、きれいな空気を取り込み、汚れた空気をはき出すだけでなく、ナノイーXの効果を合わせる事により有害物質の抑制効果をさらにアップさせた。

これにより、一年を通して建物内で安心して深呼吸できる健康で快適な空調の提供が可能となった。




5.おわりに
近年のエアコンは、様々な技術革新により省エネ性、快適性や利便性が向上するとともに、清潔性や空気の清浄性の向上が進められてきた。

今回紹介した「エオリア」LXシリーズは、在宅時間の増加や猛暑厳冬と言った環境の変化の中、一人ひとりに寄り添い、「健康で快適な暮らし」の実現に貢献できるものと考えている。


お部屋の空気質への関心が高まる中、エアコンの重要性は増していくと考えており、当社ではこれからも、一人ひとりに最適な、健康で快適な空気づくりに取り組んでいく。

※1:臨床環境医学第9巻第2号 村上周三「住まいと人体-工学的視点からー」
※2:当社環境試験室(約14畳)、外気温35℃、体感温度25℃が得られるよう設定、冷房安定時。
※3:2022年10月17日現在。国内家庭用エアコンにおいて(当社調べ)
※4:当社環境試験室(約14畳)、外気温2℃、室内温度11℃時、AIチャージを設定し予熱運転中に暖房運転を開始した場合
※5:パナソニック(株)プロダクト解析センターにて評価。23㎥(約6畳)の試験室において、6段階臭気強度表示法による測定。


以上
Topへ戻る