2023年度 省エネ大賞
省エネルギーセンター会長賞
パナソニック株式会社空質空調社

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No.697 2024年5月

【製品・ビジネスモデル部門/家庭分野】

省エネ性と快適性を追求するエアコン” エオリア24XS・HXシリーズ”



写真1:エオリア24XS・HXシリーズ



1.はじめに

家庭で電力を多く消費するエアコンは、高い省エネ性が求められている。当社はこれまでも様々な省エネ技術の開発を行い、高いAPFの実現と、AI技術を活用してセンサの検知内容、運転履歴などを分析・学習し、運転を最適化していくことで、実使用環境下でも快適性と省エネ性を両立させるAI自動運転技術などを開発してきた。一方、住宅性能においても、日本では2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、2030年以降の新築住宅についてはZEH基準を達成することの目標が設定された。

ZEH住宅においては従来の一般住宅で求められる性能に加え、低負荷での省エネ性能や高気密住宅内でのカビ発生を防止する除湿性能の向上などが求められる。また昨今、人生百年時代を見据え、生活の質の向上やストレス低減へのニーズも高まっていると言える。


写真2:表彰状とトロフィー



このような背景から、今回の開発では将来のZEH住宅を見据えた上で豊かな人生を提供することを目的に、お客様のストレスからの解放をスローガンに快適性と省エネ性を追求したエアコンの実現を目指した。具体的には、

① 「エオリア アプリ」での3万件を超える体感アンケート・利用者操作履歴から導いた“どの気温の時にどの温度設定が最適か”のアルゴリズムを構築、それをエオリアAIに読み込み、エアコンが自動で温度を設定することによる操作ストレスからの解放

② 従来のエネチャージ快湿制御に加え、精緻な風量制御と圧縮機制御の進化により冷房時の低能力運転を実現した「エコインバーター制御」により温湿度の安定を保ちながら省エネ性の向上に貢献

③ 従来の足元暖房に対し、暖気の攪拌動作を加えることで温度ムラを軽減すると共に天井の暖気を有効活用することで、快適性と省エネ性向上を両立

④ 当社独自のデバイスであるナノイーを活用し、人のよくいるエリアを重点的にケアする「ねらって脱臭」を搭載することで従来の空間臭に加え付着臭まで脱臭することによる臭いストレスからの解放

を目的とした機能を新規に開発することで、わずらわしさなく、健康で快適な空気質を実現するエアコンを提供することを目指した。



2.製品の技術特長
■ログデータを用いた自動温度設定技術
① 新・AI快適おまかせ
操作ストレス及びエアコン運転開始後を中心とした温熱ストレスの低減を目的に「新・AI快適おまかせ」制御を開発した。

具体的には、業界に先駆けて2018年モデル(18X)で実装した無線技術を活用したデータ収集に着手し、いち早くエアコンの使用実態に対するデータベースを構築。同データベースに格納された3万件を超える体感アンケート・利用者操作履歴から“どの気温の時にどの温度設定が最適か”を導出するアルゴリズムを構築。

それをエオリアAIに読み込むことで温度設定不要のワンボタン設定で快適なお部屋の空調を実現できる仕様とした。

更に個人の好みに応じた温度設定も可能とするため、0.5℃刻みで個別に設定できる温度シフト機能も搭載した。

また、当社独自のアプリケーションであるエオリアアプリを進化させ新・AI快適おまかせ設定時の目標温度と現在温度が一目でわかるインターフェイスを開発。目標温度・現在温度を見せる化することで、節電意識の向上も目指した(図1)。



図1:アプリ上での新・快適AIおまかせのイメージ




■風量・圧縮機制御精緻化による低能力運転技術
② エコインバーター制御
今回、圧縮機については分割コアベースのステータを搭載し巻線占積率を向上させた新モータを採用しており、同圧縮機と新たな制御の組み合わせにより低能力運転時の省エネ性向上を図った。

当社は2021年モデル(21X)より、活用されていなかった熱エネルギーを暖房だけでなく冷房にも有効活用することで10%の省エネを実現するエネチャージ快湿制御を実装しているが、本モデルではこの冷房低能力時の安定運転をさらに進化させるべく、エコインバーター制御を開発した。

本制御では学習機能により導出した部屋の断熱係数、人感センサによる活動量、日射センサによる日射量に応じて快適な温度を設定すると共に、低能力運転時の風量ゆらぎ運転において、快適性と信頼性を両立させるために低風量時の風量制御を精緻化、更に新AI快適お任せによる予測制御により、熱負荷に応じて運転停止(サーモオフ)点をシフト、冷房運転時の低能力運転をアシストすることで、温湿度の安定を保ちながらエネチャージ快湿制御と組み合わせ、省エネを実現した(図2参照)。

先述の通り部屋の断熱係数も含め実使用に応じて低能力運転を継続する同制御を実装することで、ZEHのような高断熱・高気密住宅においてもサーモオフを回避し、安定した室温及び除湿能力を維持することで省エネ・快適性を向上させる仕様とした。



図2:エコインバーター制御のイメージ




■独自の気流制御の組み合わせによる暖気攪拌技術
③ サーキュレーション気流
今回の調査で、暖房運転時に66.7%の人が省エネを、46%のお客様が、部屋がまんべんなく暖まることを求めていることがわかった。

これらの要求を同時に満たすため、天井部の暖気を有効活用することでお部屋全体の温度ムラの均一化と共に省エネ性の向上を実現するサーキュレーション気流を開発した。

具体的にはこれまでの足元暖房に加え、暖気が天井付近に滞留するタイミングで段階的に風向を上向きに制御し、上部に溜まっている暖気を攪拌することで温度ムラを低減、同時に省エネ性向上を実現した(図3参照)。



図3:暖房サーキュレーション制御



ZEHのような高断熱住宅では上部からの熱も逃げにくく天井面に暖気が滞留しやすいため、ビッグフラップを用いた天井気流により暖気を有効活用する本機能の有用性は今後更に増すと考えている。


■人のよくいるエリアにナノイーを集中暴露する技術
④ ねらって脱臭
商品企画段階のデプス調査では清潔やお部屋のニオイに関するご不満が抽出された。当社は2009年モデル(09X)より独自のデバイスであるナノイーを搭載、年々進化を遂げ、2022年モデル(22X)からはOHラジカル量が当初の100倍となるナノイーXを搭載することで、カビ菌の抑制・除菌や空間臭の低減を実現してきた。

今回、結露水とナノイーの力で空間のにおいを脱臭するだけでなく、人感センサで人のよくいるエリアを検知した箇所へ集中的にナノイーを届け、付着臭を脱臭する「ねらって脱臭」を開発。30分ナノイーXを集中的に届けることで自然減衰に対し付着臭が低減することを確認した(図4参照)。



図4:ねらって脱臭の制御イメージと効果



3. おわり
当社は、省エネ性と快適性を追及するエアコンの開発を目的とし、独自のセンサ技術と学習制御で無駄を省く「エオリアAI」や、圧縮機の排熱を霜取り運転や冷房に活用する、「エネチャージ」によって実使用上の省エネ性を高めてきた。

本製品では需要の高まるZEH住宅への対応を念頭に、低負荷条件での省エネ性能や高気密住宅特有の湿度の上昇や空気の滞留によるストレスを解消する機能開発に取り組んだ。具体的には、従来のエネチャージ快湿制御に加え、精緻な風量制御と圧縮機制御の進化により低能力運転を実現する「エコインバーター制御」、室内の温度ムラを解消し、省エネ効果を向上する暖房サーキュレーション気流を搭載し、将来のZEH住宅を見据え、省エネ性と快適性を向上する省エネエアコンを実現した。

環境負荷や健康寿命がこれまで以上に重要視される現代社会において、当社では、これからも省エネかつ健康・快適な空気づくりで、社会に貢献していきたい。


以上

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