2023年度 省エネ大賞
省エネルギーセンター会長賞
ダイキン工業

印刷

No.697 2024年5月

【製品・ビジネスモデル部門/家庭分野】
カーボンニュートラル実現に貢献する産業用高温出水ヒートポンプチラー

『JIZAI HEAT(ジザイヒート)』



写真1:羽東 公一(右:執行役員)



1.背景・製品概要
温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルの取組みが各市場で行われ始めています。特に工場市場においては燃料を燃焼させCOを排出するボイラーなどの燃焼系設備からヒートポンプなどの電化や排熱回収装置に置き換えて、CO2 排出量の抑制や省エネ化の動きが加速しています。そこで、工場ボイラーからヒートポンプへ置き換えのニーズを満たすような能力帯のチラー製品を開発しました。


ダイキン工業 省エネ大賞 ヒートポンプチラー『JZAI HEAT』
図1:JIZAI HEAT製品写真



2.製品の技術的特徴
設備に使用する洗浄液などの加熱には、ボイラーによる蒸気の利用以外にヒートポンプチラーで昇温した温水を利用する手段があります。しかし、一般的な冷媒を利用したヒートポンプチラーでは55℃の温水までしか作ることができないという課題があります。工場の設備は、ボイラーでつくった蒸気で圧縮機の洗浄液などを加熱し、90℃近くの温度で乾燥用途に使用するなど多くのいろいろな業種の工場で利用されています。

下記にあるように業種により工場の設備に必要な温度帯は様々でありますが、洗浄液など低温化技術もあり60℃~70℃が多くをしめています。60~70℃に洗浄液を加熱するためには80℃の温水が必要となります。




図2:工場用途別水温


また、2021年度の産業用ヒートポンプ導入量把握調査結果報告書から工場の設備に必要な加熱能力は25~30kWが主であることも分かってきました。そのため、市場で販売されている商品では加熱能力はオーバースペックとなることがあり、加熱能力を調整する設備等も同時に設置する必要性や故障時の交換部品の費用高、必要能力よりもさらに大型なヒートポンプチラーを設備の隣に設置するためのスペースの確保など、導入にあたって様々な制約を排除する必要がありました。

さらに、工場設備で利用するためには大量の洗浄液の加熱を設備が稼働している間継続する必要があり、ヒートポンプチラーで実施するためには、沢山の水量が必要です。そのため、循環方式で大流量に対応した商品が必要となります。

上記課題に対応するために本製品は以下3点を実現しました。
(1)ヒートポンプチラーでの高温出水(80℃)の実現
(2)加熱能力30kW の商品化
(3)循環方式を達成するための大量の温水を供給


(1)ヒートポンプチラーでの高温出水(80℃)の実現
高温の水をつくるために単元の冷凍サイクルで行うと圧縮機の吐出ガス温度が高くなり、冷凍機油の炭化が進んでしまうことから機器の故障につながります。そのため、安定した吐出ガス温度での冷凍サイクルとするためにニ元圧縮システムを採用することで、最高80℃の高温出水を実現しました。



図3:二元冷媒回路



(2)加熱能力30kW の商品化
上記の冷凍サイクルで30kW の加熱能力となるように、一元側は、自社の他のシリーズの製品を流用。二元側は、冷媒の圧力差から新たな圧縮機を開発。熱交換器にはプレート熱交を採用し、加熱能力を達成しました。


(3)循環方式を達成するための大量の温水を供給
工場の設備では生産の品質や効率の向上を図るために、安定した水温で大量に温水を供給することが求められます。本開発機では1.5kW のポンプを採用し、大流量で温水を送水。また、大流量化による温水と冷媒を熱交換する熱交換器に低圧損となるプレート熱交を採用することでさらなるポンプの大容量化を抑えました。(2)のシステム構成を達成するために工場設備向けに要望されるコンパクト性とメンテ性を考慮しました。

3.おわりに
今後は、低GWPの冷媒に転換した商品開発にも取組み、カーボンニュートラル実現に貢献していきたいと考えております。


以上

Topへ戻る