海外短信 No.703 2025年3月

印刷

No.703 2025年3月

海外の冷凍空調関連の気になるNEWSをピックアップし、掲載していきます。

1.高GWP冷媒が大気中で増加_

カナダの研究チームが、エアコン用冷媒R410Aの主要成分である高GWPガスHFC125の大気中濃度が過去20年間で指数関数的に増加していることを明らかにしました。

特に、オンタリオ州ウォータールー大学のAtmospheric Chemistry Experimentによる調査で、HFC125の増加率は過去6年間で3.47±0.05 ppt/年に達していることが確認されました。 HFC125は3920という高い温暖化潜在能力(GWP)を持ち、R410Aの50%、R407Cの25%、R404Aの44%を占めるほか、消火器にも広く使用されています。

研究チームは、これまでにオゾン層破壊物質の減少とオゾン増加を測定してきましたが、現在は地球上空11kmから25kmのHFC125の濃度を測定することに注力しています。

彼らは、2003年から運用されているカナダのSCISAT衛星を活用して、オゾン層の破壊に関する理解を深めています。ウォータールー大学のピーター・バーナス教授は、衛星データが2004年以来の収集結果を示し、HFC125の大気中濃度が約10倍になっていると述べました。

新たな国際規制により、過去に規制されていた冷媒同様にHFC125の増加率も抑制されることが期待されています。研究チームの発表は、気候学者にとって気候変動の予測に必要な情報を提供し、成層圏における化学反応の詳細を明らかにする役割を果たすと期待されています。これまでの測定は地上や低い大気圏に限られていましたが、カナダ独自のミッションがこれまでの研究を大いに支援しています。


High GWP refrigerant increases in the atmosphere
Cooling post 2024年12月



2.産業用ヒートポンプは脱炭素化の鍵
産業用ヒートポンプは脱炭素化において重要な役割を果たすとされ、欧州ヒートポンプ協会(EHPA)は、この技術の普及によってEUの産業界が年間1460万トンのCO2を削減できると指摘しています。

また、現在のヒートポンプ技術は産業プロセス熱の37%を供給可能であり、これにより欧州の産業部門は排出量を約24%削減でき、これはオランダの年間排出量を上回るとされています。

EHPAは、欧州の持続可能な産業には大規模ヒートポンプが必須であり、既存の技術はさまざまな製造工程で高信頼性の熱とコスト削減を実現していると強調します。そして、産業用ヒートポンプを欧州委員会のクリーン産業ディールや脱炭素促進法、電化行動計画などに中心に据えるよう求めています。


Industrial heat pumps are key to decarbonisation
Cooling post 2025年1月



3.中国のRAC過剰生産が世界市場に与える影響
ゴールドマン・サックスのレポートによると、中国のエアコン(RAC)、電気自動車(EV)、太陽光パネルなど5つの産業で供給能力が世界需要を上回り、過剰生産が貿易紛争の原因となっています。

2023年から2024年にかけて、中国のRAC市場は需要減少や不動産低迷などで停滞。にもかかわらず、生産能力は拡大しており、主要ブランドは新工場設立を進めています。中国のRAC生産能力は前年比8.3%増加し、2024年の輸出は27%増となりましたが、輸出先市場での価格下落や中東情勢の影響で成長の先行きは不透明です。

過剰生産を解決するため、企業は高級製品やスマート空気ソリューションに注力していますが、競争激化を防ぐため業界全体でルールを策定しています。


China’s AC Overproduction Impacts the Global Market
JARN 2024年12月



4.米国新政権下での課題と新たなエアコンビジネスチャンス
2025年1月に発足するトランプ新政権は、アメリカ第一主義に基づき、輸入関税の引き上げや移民管理強化、エネルギー規制緩和などの保護主義政策を採ると予想されます。これにより、アメリカのエアコン業界も影響を受けることが考えられます。

米国市場は省エネや低GWP製品が普及していないため、トランプ政権の環境規制への消極的姿勢が業界の目標と矛盾します。また、輸入関税引き上げや移民抑制は、原材料価格の高騰や人手不足を引き起こし、経済に悪影響を及ぼす可能性があります。

とはいえ、新政権は外資企業の誘致を進め、エアコン業界にとっては新たなチャンスとなる可能性があります。特に、米国政府が半導体工場誘致を進める中、省エネエアコンの需要が増すことが予想され、インバータ技術を駆使した日本やアジアのエアコンメーカーにはビジネスチャンスが広がります。


Challenges & New AC Business Opportunities under the New U.S. Administration
JARN 2024年12月



5.パロマ・リーム、富士通ゼネラルを買収し、両社の強みを結集してグローバル展開を強化
2025年1月6日、パロマ・リームホールディングスは、富士通ゼネラルの全株式を取得し、完全子会社化する意向を発表した。取得総額は約2,560億円で、2025年7月に公開買付けを開始予定。

パロマ・リームは、ガス給湯器のパロマと、米国の空調メーカーリームを傘下に持つ持株会社で、2023年に設立された。富士通ゼネラルは日本の主要空調メーカーで、ヒートポンプ技術を強みとし、欧州や北米市場にも展開している。統合後、両社はヒートポンプ技術の開発と生産を加速し、北米やアジアなどの市場に拡大する予定。

また、製造拠点の地産地消体制を構築し、物流コスト削減やリードタイム短縮も目指す。両社の統合は、技術開発の強化や販売体制の強化を通じて、グローバル市場での競争力向上を狙っている。


Paloma Rheem to Acquire Fujitsu General to Boost Global Presence via Combined Strengths
JARN 2024年10月



以上

Topへ戻る