海外短信

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No.650 2017年4月

米国冷凍空調業界「ルーフトップ省エネ規制」へ準備
“史上最大の省エネ基準”と米政府
 米政府が“史上最大の省エネルギー基準”と考えるルーフトップ・省エネルギー標準の施行まで、冷凍空調業界の準備期間が1年を切った。業務用空調機、ヒートポンプ、業務用温風暖房機などルーフトップユニットと呼ばれる機器に対するエネルギー省(DOE)の基準は2018年1月1日から施行される。
 病院、学校、郊外型大規模小売店などの低層ビルに新設される空調機も含めて、基準は2段階で行われる。2018年1月1日から最低効率が約10%上げられ、2023年1月1日からは25~30%のアップとなる。業務用温風暖房機は2023年から施行される。
 DOEの推定では新たなルーフトップ空調機基準により30年間の販売で1兆7千億kWhの節電となり、これは全米すべての石炭火力の1年間に発電する電力量に相当し、これまで最大の省エネ基準であった2014年のモーターや2009年の蛍光灯などいかなる基準をも上回るものとなっている。


 基準をクリアするために冷凍空調業界はいくつかの変革を強いられている。施行まで365日にも満たない今日、産業界は新たな規制への準備ができるのであろうか。
 米国冷凍空調工業会(AHRI)で規制と調査を担当するカリム・アムラン副会長は、「ルーフトップ規制は機器がいかに良好に稼働し成果を挙げるかを示すものとなる。製造メーカーは2018年規制への準備を整えつつあり、我々はスムースな移行を期待している」と述べている。
 変革の大きさと残された期間の短さにもかかわらず、冷凍空調業界は準備し、進んでこの国家的なエネルギー基準を達成し、ある例ではさらにそれを上回ろうとしている。
http://www.achrnews.com/articles/134296-hvac-industry-prepares-for-rooftop-regulations
〔Air Conditioning, Heating and Refrigeration News January 23, 2017〕

ケマーズ テキサス州でR1234yfの設備投資
HFO“オプテオン”の生産能力を3倍に増強
 ケマーズはテキサス州でR1234yfの新たな生産設備の建設を開始した。これにより生産能力はこれまでの3倍となる。テキサス州イングルサイドのコーパスクリスティー工場で商品名“オプテオン”のHFO冷媒を生産する。
 この投資によりHFOの生産としては世界で最大規模となる。成長が見込まれる北米および欧州をはじめ、世界各地へ効率的に出荷できる工場立地になっている。現在ケマーズはR1234yf関連製品の生産ではリーダーであるが、この設備能力の増強によりその地位を固めるものと期待されている。
 ケマーズフルオロ製品の社長であるポール・キルッシュ氏は、「低GWP冷媒であるオプテオンはすでに大量に採用されているが、2017年末までにR1234yfを搭載した乗用車が世界で5,000万台以上走っているであろう。また2020年までにオプテオンを使用しているスーパーマーケットや業務用冷凍システムは1万件以上になるであろう」と述べている。
〔RAC, March 2017〕

ハネウェルの低GWP HFO冷媒 ソルスティス
N40 2000店舗以上で採用される
 ハネウェルは、低GWP HFO冷媒であるソルスティスN40(R448A)を採用したスーパーマーケットの数が2,000店以上になったと発表した。ソルスティスN40は最も広く採用された低GWP冷媒であると同社は述べている。
 R448AはHFOのブレンド冷媒であるが、中低温の冷凍装置で使用され、R404Aよりもエネルギー消費量が5~16%少ないと同社は述べている。スーパーマーケットの装置、冷凍食品のケース、冷凍室、およびブラストフリーザなどの業務用冷凍装置に使用され、エネルギー効率の高いHFCの代替冷媒となっている。ソルスティスN40のGWPは1273であり、R404Aよりも68%小さい。
〔RAC, March 2017〕

米国EPAの冷媒管理プログラム
規制値を強化して施行される
 米国環境保護庁(EPA)のセクション608冷媒管理プログラムが2017年1月1日より施行された。EPAによるとこの最終規則は産業界が数多くの目的を達成するために有効な方法を要求することにより、現在のプログラムの強化を狙ったものである。
 この新しいルールによりCO2の排出が年間730万トン削減されるものとEPAは予測している。


国家冷媒管理プログラムの8つの項目

 ルールの主要な変更は次の6項目となっている。
1. 冷媒管理プログラムでの規制対象をHFCまで拡大した。CO2、アンモニア、プロパンなどはこれまでどおり規制対象から除外する。
2. 冷媒充てん量が50ポンド(約22.6kg)以上の冷凍および空調装置において修理をしなければならない冷媒漏えい率を下げた。


3. 漏えい率の閾値を超えて漏えいした場合、冷凍および空調装置については、四半期ごと、または年間ごとに漏えい検査を行うか、連続監視装置を設置すること。
4. 冷媒充てん量が50ポンド(約22.6kg)以上の冷凍および空調装置において、1年間に全充てん量の125%以上の冷媒を漏えいした場合、所有者/作業者はEPAに報告しなければならない。
5. 販売制限の対象をHFCと規則適用対象代替物まで拡大する。
6. 冷媒充てん量が5ポンド(約2.3kg)から50ポンド(約22.6kg)の機器を廃棄するときは、技術者は回収した冷媒量を記録しなければならない。
〔Air Conditioning, Heating and Refrigeration News February 6, 2017〕

VRFシステムの世界の市場規模は2022年に
240億ドルに達する見込み 年率11.4%で伸長
 世界のVRF(Variable Refrigerant Flow)システムの市場規模は2015年に110億8千万ドル(約1兆2200億円)であった。VRFは今後年率11.4%で伸長を続け、2022年には240億9千万ドル(約2兆6500億円)に達するものと予測される。2016年7月に米国の市場調査会社マーケット・サンド・マーケットが調査レポートで発表した。2桁での成長を続ける背景は、効率の高さ、設置と保守の容易さなどがある。
 今後特に伸長が期待される地域は米国北東部であり、次に中部大西洋沿岸地域、南西部、西海岸が堅調な成長が見込まれる。VRFシステムは部分負荷特性に優れ、また冷却塔やポンプ、ボイラが不要。システムが簡単であるためルーフトップユニットやチラーシステムを代替していくものと考えられている。
〔Air Conditioning, Heating and Refrigeration News February 13, 2017〕

中国 生鮮食料品を輸送する冷凍車が不足
コールドチェーンは年率20%で成長
 中国では毎年10億トン以上の生鮮食料品が消費されており、このうちの50%以上がコールドチェーンで輸送されるべきものとなっている。しかし現在コールドチェーンでの流通が整備されているのはわずか19%であり、農産物の損失率が高くなっている。果実と野菜の損失額は毎年1千億元(145億ドル)(約1兆6千億円)に達している。最近生鮮食料品でもインターネットで購入されるため、コールドチェーンでの物流が今まで以上に必要になってきている。
 中国では2015年に冷凍車の生産が1万4千台増加し、すべての稼働している冷凍車の台数は9万台を超えた。年率18.4%の成長であった。しかし市場の需要に対してはわずかな台数である。中国におけるコールドチェーンのロジスティックスの市場規模は2020年に4700億元(685億ドル)(約7兆5千億円)と予測され、年率20%を超える成長となっている。
〔JARN, February 25, 2017〕

インドにおけるコールドチェーン整備計画
英国冷凍産業界に参加呼びかけ
 英国のバーミンガム・エネルギー協会が、英国の冷凍産業界に対して、インドにおけるコールドチェーンの市場調査への参加を呼び掛けた。この調査は英国の科学改革チーム、国際貿易省、およびインドのコールドチェーン開発ナショナルセンターが後援している。
 協会はインドおよび英国から政府、産業界、技術分野、および学術分野の専門家を招集してワークショップを開催し、CO2の排出を最少に抑えながら、“クリーン冷凍”技術により農家がより多くの農産物を市場へ輸送する方策について討議した。
 協会のトビー・ペータース教授は「インドのモディ首相は農家の収入を2022年までに倍増することを目標としている。インドでは産地から消費地までの間で40%以上の農産物が損失している。農家から消費者まで農産物を速やかに配送する切れ目のないコールドチェーンの整備が必要となっている」と述べた。


 インド政府は農家の収入を倍増する戦略としてコールドチェーンへの投資が欠かせないものと考えている。インドに参集した専門家はコールドチェーン整備のために、技術採用の加速とリスクの軽減、また新しいクリーンな冷凍技術を試行するための資金の供給などを内容とした勧告を取りまとめようとしている。
〔RAC, March 2017〕