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序章 空気調和のあゆみ |
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冷凍空調製品は,戦後半世紀を経て,生活のすみずみに浸透しています。私たちの日常生活,日々の食べものと住居と仕事場,それに各産業界において冷凍技術なしに存在するものを探す方がむしろ難しいかも知れません。冷凍空調工業はその意味で,現代の社会を支えているといえます。
応用分野の広がりはまた,この工業に携わる人々,その応用の分野,その職種によって専門性を増してきているといえます。
このシリーズは,それぞれの専門の方を含めて,冷凍空調に携わる人すべての人にとっての最も基礎的な知識をシリーズとして掲載するものです。従来こうしたシリーズは技術者向けのものが多い傾向にありましたが,今回は営業などの職種に就く人にも“読んでわかる”内容をめざしました。
シリーズでは,最初は空調分野をとり上げ,次いで冷凍冷蔵分野へと広げていく予定です。
執筆は,「冷凍と空調」の編集を担当する広報委員会の下に「基礎知識分科会」を設け,分担して行っていきます。
人と住まいと暖房
四季折々に目を和ませてくれる自然の風物・・・・・・。日本人にとって,自然は美しいもの,生きとし生けるものを育んでくれるやさしいものとのイメージがあります。しかし一方で自然は,暴風雨や厳寒・酷暑など人間にとってその過酷な面をむき出しにし,耐えられない試練を課すこともまれではありません。
人の祖先がこの地球上に生まれて400万年といわれています。熱帯の森林からサバンナへ,二足歩行をはじめた人たちにとって,自然の中で食物を探し回るのと同じように,風雨を避け,寒暑をしのぐのに心を砕いたに違いありません。
着衣と住まいとがそのための発明でした。数十万年前,原人といわれる段階では,岩陰の遺跡から火を使ったあとが発見されています。火の発明は,食品の消化を助け,食生活の安全性を高めるとともに,その住まい,着衣とあいまって,はじめて寒さをしのぐ手段を手にしたといえます。
その後,旧人から新人へ進化し,採集経済から農耕社会へ移行するとともに,人は長期間,1か所に定住する生活に入ります。数千年前のことです。住まいは工夫され,暖を取ることが定着します。世界各地の多様な暖房方式は,こうした長い歴史に裏打ちされているのです。しかし,暑さに対しては,住まいの風通しを良くするなどの工夫にとどまっていました。
そして今,我々が普通に使っているエアコン,住まいの中の空気を「冷やす」という原理が発明されてから 100年,実際に広く使用されるようになったのはこの半世紀のことです。