基礎知識

序章 空気調和のあゆみ

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産業空調としてスタート

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 「冷やす」技術を使った空気調和の始まりは,19 世紀には実験的なレベルで実用化されていました。当初はすでにある暖房用設備に井水を通して使うものから,氷を使うものへと進み,こうした中で,20世紀に入ってから冷凍機による冷水を使うものが試みられてきます。現在の空調設備の原型ともいえる設備が完成したのは1903年,ニューヨークの石版印刷会社でした。当時,多色印刷は何回にも分けて色を重ねるのですが,その間に温湿度による紙の伸び縮みで「ずれ」が生まれ,商品にならなくなります。そのために設計・設置されたのが,アンモニア冷凍機と冷水・蒸気コイルを備え,加熱・冷却,加湿・減湿を行い,温湿度を一定に保つ空気調和装置でした。設計したのは,当時 26 歳のウィルス・キャリア,後に空気調和の父といわれる人です。
 この前後から,米国では,製紙,繊維,薬品,食品等多くの産業に多様な空調設備が広がっていき,また,ホテル,百貨店等にも使用されていきます。
 なお,こうした技術の流れの中で,1906年,スチュアート・フレーマーという技術者が初めて“Air conditioner”なる言葉を使ったとされています。
 キャリア氏はその後ターボ冷凍機を開発(1927年),セントラル空調のスタンダードとなって今日にいたっています。
 こうしたセントラル空調の発展を基礎に, 1929年,最初のルームクーラーが製作されます。冷媒は亜硫酸ガスでした。冷媒としてフロン(フルオロカーボン)を使用したエアコンは 1935年になって製作され,以後着実に普及していきますが,米国でも,一般家庭に広く普及していくのは戦後,1960年代のことです。
 アメリカにおける冷房の普及は,まずルームエアコン(ウインド形エアコン)として始まり,年間数百万台規模の市場になりましたが,1戸建て住宅における温風暖房設備の中に冷却コイルを組込み,ダクトにより冷房を行うユニタリーエアコンが順次普及を始め,現在では住宅用空調といえば,アメリカではユニタリーエアコンを指すことが普通になっています。