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序章 空気調和のあゆみ |
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新しい課題への対応 |
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21世紀を迎えて,空調機器業界をめぐる社会状況はより厳しくなっています。
それは一つには,家庭用・業務用のエアコンとも,大きな市場を形成するようになり,あらゆる意味で社会的に無視できない製品になっているためです。
空調機器にかかる課題の最大のものは,地球環境問題です。そして,空調機器の命ともいうべき冷媒について厳しい対応が迫られています。1973年に提起されたフロンによる成層圏オゾンの破壊の疑いは,南極におけるオゾンホールの発現により世論としては決定的になり,オゾン層保護条約,オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書の強化・前倒しとなり,1995年,先進国において CFC が全廃され,HCFC についても 2020年には全廃するとの義務付けが行われました。
HCFC を使用してきた空調機器は,冷媒の代替物質への転換が迫られています。代替冷媒としてその製品化を進めてきた HFC 冷媒使用製品についても,1997年に開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)において,排出を制御すべきガスとして
HFC が指定されるに及んで厳しい管理が求められるようになります。
また既に使用された製品の CFC,HCFC についてはもちろんのこと HFC についても回収・処理の法制化が進められ,2001年4月から家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)が施行され,メーカーによる家庭用のエアコン,冷蔵庫の冷媒フロンの回収・処理が義務付けられました。また,2001年6月,議員立法によりフロン回収破壊法(特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律)が成立・公布され,2002年4月以降,業務用冷凍空調機器,自動車用エアコンについても法律による義務付けが行われるようになります。
環境問題の第二は,省エネルギーです。戦後,驚異的な高度成長をとげた日本は,一人当たりのエネルギー消費でみて先進国の中で決して低いほうにあるわけではありません。そして家庭でも,事務所でも,エネルギー消費の多くの部分が空調によって消費されています。1970年代に2回の石油危機を経験したわが国は,省エネルギー法により空調機器の省エネルギーが図られてきましたが,CO2 の排出削減を主眼とした地球温暖化防止京都会議とあい前後して,世界でもっとも厳しい目標値を定める省エネルギー法が改定・強化されました。
エネルギー資源の乏しいわが国が,そして生活の中でもっとも大きなエネルギー消費をする機器と見られている空調機器を扱う我々にとって,省エネルギーは永遠のテーマといえます。
環境問題の第三はリサイクルです。2001年4月,家電リサイクル法が施行され,日本は,拡大生産者責任を織り込んだ,循環型社会の形成に大きく舵をきることになりました。対象となる4品目の一つとしてエアコンが指定されていることはご存知の通りです。当初のリサイクル率(再商品化率)は
60 %と規定されましたが,今後さらに高められていくでしょう。また業務用の空調機器についても,長期使用の促進やリサイクルの要求が高まっていくでしょう。
現代文明の中で必須の要素となった空調,今後には多くの課題がありますが,我々空調器を扱う皆が英知を寄せあって解決していく必要があります。
(担当:松本秀男)