海外短信

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No.679 2021年9月


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1. 三菱電機 トルコの生産拠点を増強 欧州でのエアコン需要増に対応
三菱電機は2021年5月27日、三菱電機エア・コンディショニング・システムズ・マニュファクチャリング・トルコ(MACT)の生産能力を増強するために1億6700万トルコリラ(約21億円)投資すると発表した。MACTはトルコにおける空調機の生産拠点である。



三菱電機エア・コンディショニング・システムズ・
マニュファクチャリング・トルコ(MACT)


MACTの生産能力は、新たに生産する空気熱源給湯ヒートポンプ(ATW)とこれまでのルームエアコンを合わせて年間100万台となる。これまでの生産はルームエアコンのみで年間50万台であった。ATWの新たな生産は2022年8月から開始される予定。ルームエアコンについても今年10月から生産能力を増強する。生産工場では新たな環境対策として、省エネ機器の採用と運搬の電動化を図っている。

欧州及びトルコの暖房市場では、欧州の脱炭素化方針に従って、化石燃料を使用したボイラ暖房は急速に暖房給湯ヒートポンプ(ATW)に置き換わりつつある。これに加えて、新型コロナウイルスの感染対策として在宅勤務が増えており、エアコン需要が増加している。将来もエアコン需要は引き続き増加傾向が見込まれる。

〔JARN, June 25, 2021〕




2.ダイキンヨーロッパ 欧州で使用済み冷媒の循環利用を促進

Retradeablesは欧州で初めての使用済みフロン冷媒についての市場である。冷凍空調機器から回収された冷媒の循環利用を促進する。EUが出資したプロジェクトであるライフ3Rによって創設されたもので、冷媒供給の持続的代替源を用意する。市場原理によって推進される使用済みフロン冷媒の循環型経済活動を具現化する欧州のみにおけるオンラインでの取引環境である。

Retradeablesは欧州での冷凍空調市場全体のニーズに対応する。グリーン・ディール、循環型経済、及びF-ガス規制などの欧州の方針に従って、Retradeablesは市場に散在する使用済みフロン冷媒を回収し、再生及び再利用を可能にしている。F-ガスの供給が段階的に削減されるにつれて、循環利用が重要な役割を担うことになる。

ライフ3Rを推進している連合体はEU加盟国からの専門家のパートナーで構成され、ダイキンヨーロッパ、アテネ工科大学、及び素材とエネルギー利用の学会であるmat4nrgが含まれている。

〔JARN, June 25, 2021〕




3.東芝キヤリア 中国杭州にVRFほかの新たな生産工場を完成

東芝キヤリアの子会社である東芝キヤリア中国(TCAC)は、中国浙江省の杭州市銭塘江新区に新たな生産工場を建設し、社屋の移転を完了した。同子会社は6月18日、新社屋の開所式を開催し、来賓並びに政府関係者が直接またはリモートで参列した。

新工場は敷地面積53,300㎡、延床面積72,000㎡であり、ビル用マルチエアコン(VRF)とその他空調製品を生産する。新工場は製造設備に先端技術を導入しており、試験室には115mの高低差試験塔を併設している。また高い生産性と高品質を達成するために自動搬送によるセル生産方式を取り入れている。

中国におけるVRFの市場は2016年から5年間で年平均14%を超える成長率を示しており、長期的な成長が見込まれる。新工場では競争力のあるVRF他の製品の開発及び生産を行い、中国及び海外へ販売する。

東芝キヤリアの久保徹社長は式典において、「革新的な技術とスマートな生産方式により、お客様により良い製品を提供していく」と挨拶した。



東芝キヤリア中国の新たな生産工場

〔JARN, July 25, 2021〕




4.パナソニック インドネシア ジャカルタに冷凍空調機器のトレーニング・センターを設立

パナソニック・ゴーベル・インドネシアは2021年5月4日、ジャカルタ東部のシパユンで、ワーク・トレーニング・センターの開所式を開催した。センターは冷凍空調機器の据付サービスを向上し、熟練した有資格技術者を養成するために設立された。

インドネシア労働省の大臣が式典に出席し、「センターの設立はインドネシアのエレクトロニクス産業のパイオニアとして、インドネシアの産業を発展させるために、優れた人材を育成していくというパナソニック・ゴーベルの理念を現したものだ」と述べた。

同社のコーポレート・コミュニケーション部のヴィヤ・アーサヴィレジャ部長は、「我々は政府の計画に沿って会社を構築するために共に働いていく。産業界における指導的な立場を通して、インドネシアの発展のために尽くす。これは作業者の能力と福利を共に増進させる機会であり、産業革命4.0に直面して、我々の競争力を高めることになる」と述べている。



パナソニック・ゴーベル・インドネシアが開催した
ワーク・トレーニング・センターの開所式

〔JARN July 25, 2021〕




5.富士通ゼネラル オーストラリアで4年連続して‘信頼されるブランド’最優秀賞を受賞 

富士通ゼネラルのオーストラリアの販売子会社である富士通ゼネラル・オーストラリアは‘信頼されるブランド・オーストラリア2021’の空調機分野で最優秀賞に選定された。

‘信頼されるブランド賞’は、世界で出版されている雑誌リーダース・ダイジェストのオーストラリア版がスポンサーになっている。消費者が購入する多種多様な商品またはサービスを評価し、70以上の分野でそれぞれ最優秀賞が1社選定される。富士通ゼネラル・オーストラリアは空調機分野が加わった2018年から毎年受賞している。

富士通ゼネラル・オーストラリアは長年にわたり顧客ニーズに応えるために優れたサービスと商品を提供してきた。例えば、オセアニア地域で販売している同社のエアコンでは、Wi-Fi通信装置により、スマートフォンを用いて外出先からエアコンの発停と温度設定ができる。

同社は地域社会にも貢献しており、次世代を担う子供たちを支援している。オーストラリアの小児がんの子供たちとその家族を支援する組織に寄付活動を行っている。

〔JARN July 25, 2021〕




6.ホシザキアメリカ 米国環境保護庁からエネルギースター賞を連続受賞

ホシザキアメリカは、米国環境保護庁(EPA)から2021エネルギースター‘パートナー・オブ・ザ・イアー-商品ブランド’を10年連続で受賞した。高いエネルギー効率、温室効果ガスの排出削減、及び継続した環境保護活動におけるリーダーシップが評価された。また、同社は2年以上続けて同賞を受賞した企業に贈られる、エネルギースター賞のなかでも最高位となる’連続優秀賞‘を7年連続して受賞した。

‘エネルギースター’は米国政府が推進しているエネルギー高効率化の象徴であり、コンピュータ、電子機器、住宅設備、業務用食品設備などの分野が対象となっている。

今回の受賞は、省エネ性の高い製氷機と環境に配慮した業務用冷蔵庫のシリーズ拡充が評価された。また同社はエネルギースターに関連したトレーニング・セッションをオンラインで小売店や販売店に行っている。また地域社会では継続した環境保護活動を行っている。

〔JARN, July 25 2021〕




7.フランス 暑苦しい在宅でのテレワークは生産性が低下

フランスの気候工学雑誌ジニー・クライマティック・マガジンが6月23日、ドイツの家庭用省エネ機器メーカーであるタードウが行った調査を紹介した。フランスの人々は昨年週に平均18時間、在宅で室温25℃以上で仕事をしていた。新型コロナウイルスの感染が広がるなか、フランスではテレワークが一般的となってきた。しかし自宅にエアコンが無い場合生産性が低下する。タードウの調査によると、2020年の6月から9月の間に、フランスの人々は一日に平均2.6時間、室温25℃以上の環境でテレワークを行っていた。合計5,000戸の住宅での調査による。

タードウによると、このように室温が高いと、生産性が低下し、集中力が減少し、不快になる。オフィスにおける快適性の標準では、室温は20℃から22℃の範囲となっている。タードウはまた世界保健機構(WHO)は作業空間の室温は上限24℃を推奨と述べている。

フランスの在宅で仕事をしている人が、暑苦しいテレワークの作業環境を避けるためにエアコンを購入することは自明のようだ。

〔JARN, July 25 2021〕



8.フランス政府 冷媒や冷媒を封入したエアコンのオンライン販売を監視

フランスの冷凍空調誌laRPFは6月17日、以下のように報じた。フランスではこれまで冷媒や冷媒を封入したエアコンをオンラインで販売するとき、F-ガス規制の観点から監視されることはなかった。しかしフランス政府のエコロジー移行省はこの問題に取り組むことを決めた。

フランス冷凍協会(AFF)が主催したオンラインセミナーにて、フランスリスク予防理事会のプロジェクト・マネージャであるマリオン・リチャード氏は、「エコロジー移行省は不法な冷媒の販売を監視するために、主要なオンライン販売の代理店と協力して、人工知能(AI)をベースにした解決策を検討している。この新しいツールは2021年末までには使えるようになり、セパレートエアコンのようなエアコンシステムでもオンライン販売を監視できるようになる。この新しいプラットフォームの機能は2021年の後半には構築される予定だ」と説明している。

〔JARN, July 25, 2021〕




9.ロシア エアコンに使用される冷媒の新ルールを施行

ロシアでは2021年7月1日、公共建物、住宅、及び複合施設での空調システムについて新たな規則が施行された。これによると、低毒性・強燃性のA3冷媒、高毒性・不燃性のB1冷媒、高毒性・低燃焼性のB2冷媒、及び高毒性・強燃性のB3冷媒は、これらの空調システムでの使用は禁止となっている。

言い換えると、ロシアのエアコンで使える冷媒は、低毒性・不燃性で環境に優しいA1冷媒と低毒性・低燃焼性のA2冷媒でODPはゼロ、GWPは2,500以下のものとなる。しかしA2冷媒は直膨式冷房、水冷チラー、及びリモート・コンデンサーなどでのマルチセパレートタイプに使用することはできない。

〔JARN, July 25, 2021〕




10.中国 銅の価格が年初より年率換算で88%上昇

2021年6月7日、中国のメディアによると、世界的な経済回復と需要増に対する供給不足により、多くの原材料価格が高騰している。いくつかの原材料では価格が記録的な上昇となり、また原油価格も過去2年半での最高値となっている。

24の上場商品先物取引所を調査しているS&Pゴールドマンサックス商品指数は本年31%上昇している。なかでも銅の価格は32%上昇しており、年率換算では88%となる。今年の銅の価格は2011年以降で最も高くなっている。

エコノミストは価格の上昇がインフレを助長するかもしれないが、影響は短期的なものであろうと予測している。

〔JARN, July 25, 2021〕




11.インド 新型コロナウイルスの第二波が夏のエアコン販売を直撃

インドは新型コロナウイルスの感染が2020年12月から2021年2月まで高原状態であったため、制限を緩和し経済活動の再開に進んでいた。しかし2月中旬感染の強い第二波が全土を襲い始めた。その強さは第一波を上回るものであり、4月中旬にはいくつかの州で生活必需品以外の販売も含めて、人々の移動に厳格な制限が宣言された。第二波は5月中旬にピークを迎えたため、産業界は7月から8月には制限が解除されるものと期待している。

ムーディーズは5月12日、2021-2022会計年度におけるインドの成長率予測を2月予測の13.7%から9.3%へと下げた。しかし2022-2023会計年度の成長率については、以前の6.2%から7.9%へと上げている。数日前にS&Pは、新型コロナウイルスによる感染が5月にはピークを迎えるという‘穏やかなシナリオ’の下で、3月に予測した2021-2022会計年度のインドの成長率11%を9.8%に下げている。

最も被害の大きい産業は年間の売り上げをほとんど夏に依存している産業である。2年続けて冷凍空調機器の販売は打撃を被った。市場での販売は2019年の4月から5月と比較して半分以下の状況となっている。多くの主要な製造業者は在庫の増加を防ぐために、工場を全面的に、または部分的に閉めている。

〔JARN, June 25, 2021〕




12.インドネシア エアコン需要の増加に対して供給が不足  

インドネシアの冷却と冷凍に関わる企業の協会であるインドネシア冷蔵冷凍会社協会(PERPRINDO)によると、インドネシアでは乾季に入り、エアコンに対する需要は例年よりも高くなっている。しかし供給がこの需要に追いついていない。今年の1月から4月までの販売は昨年の同時期を下回っている。

PERPRINDOはエアコンの限られた供給の原因を主として昨年から続いている輸入規制によるものと見ている。輸入業者は空調機器の輸入申請を政府に行い許可を得なければならない。しかし輸入を許可される数量は、大抵の場合期待を下回ることが多い。

この供給不足により、原材料価格の急騰や半導体チップ不足のため既に上昇しているエアコンのインドネシア国内での価格が上昇している。

〔JARN, July 25, 2021〕

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 ■2021年7月号(No.678)はこちら
 ■2021年5月号(No.676)はこちら
 ■2021年3月号(No.675)はこちら
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