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第1章 空気調和のあらまし |
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1.3 空気の状態を表すいろいろな用語 |
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空気の状態を正確に捉えるためには,空気の中身を分析して数値的に表わすことが必要になります。そのためのいろいろな用語について説明しましょう。
(1)
「乾球温度」と「湿球温度」
空気の温度は,寒暖計(乾球温度計)で測りますが,この温度を乾球温度(Dry Bulb Temperature)といい,例えば
26 ℃DB というように表示します。しかし,乾球温度だけでは空気の湿り具合を表すことができません。そこで使われるのが湿球温度計です。湿球温度は,寒暖計の測温部を水で濡れたガーゼを巻いた湿球温度計を使って測ります。空気が乾いているとガーゼから水分が蒸発し,その蒸発熱により測温部が冷やされて,その時の乾球温度よりも低い温度を示します。乾球温度と湿球温度の差が大きいほどその空気は乾燥していることになります。
湿球温度(Wet Bulb Temperature)は,19 ℃WBというように表示します。
(2) 「絶対湿度」と「相対湿度」
湿り空気の湿り具合(湿度)を言い表すのに,絶対湿度と相対湿度の2つがあります。
絶対湿度とは,乾き空気1sの中に,水分が何 s 含まれているかを表すもので,単位は〔s/s〕で示します。この数値は,加湿量や除湿(減湿)量の計算に使われます。
空気の中に含まれる水分の量は無制限ではなく,1s の空気に含まれる最大の水分量は,その温度によって決まってしまいます。この最大限水分を含んだ状態を飽和状態といい,その状態の空気を飽和空気または飽和湿り空気といいます。
相対湿度(Relative Humidity)とは,ある温度における湿り空気中の水分量が,同温度の飽和状態(飽和空気)における水分量に対し何%かということをいい,例えば
50 % rh のように表します。飽和空気の相対湿度は 100 % rh ということになります。
同じ空気でも,温度が高いほどその中に含むことのできる水分量は大きくなります。このことは,ある状態の湿り空気の温度だけが変化した場合,その中の絶対湿度(水分量)は変化しませんが,相対湿度は変化することを意味します。温度が上がれば相対湿度は下がり,温度が下がれば相対湿度は上がります。
(3) 「露点温度」
相対湿度が 100 %ということは,その温度の空気にはそれ以上水分を含ませることが出来ない,すなわち,その温度での含みうる水分量(絶対湿度)が決まっているということですが,例えば,26
℃DB・50 % rh の空気の温度を 14.7 ℃DB まで下げるとどのようになるでしょうか。
26 ℃DB・50 % rh の空気の絶対湿度は,0.0105 s/s です。温度が下がっても絶対湿度(水分量)は変化しません。それでは,温度が 14.7
℃DB まで下がって,絶対湿度が 0.0105 s/s のときの空気は,相対湿度何%になるかといえば,100 % rh になります。すなわち,14.7
℃DB 以下に温度を下げると,その空気はそのままの水分量を含んでおられなくなり,水滴として放出します。この現象を結露または凝縮といいます。そして結露し始める時の温度を露点温度(Dew
Point Temperature)といい,〜℃DP と表示します。26 ℃DB・50 % rh の空気の露点温度は 14.7 ℃DP ということになります。
梅雨時や暖房時に,窓ガラスや壁に結露するのはこの現象です。室内が外気よりも温度が高く絶対湿度も高い場合,ガラス面や壁面の温度が室内温度よりも低くなり,その面に接している空気が冷やされて相対湿度が
100 %となり,水滴が出てくることによります。
(4) 空気の「比体積」
空気1s がもっている体積(容積)を比体積(比容積)といい,単位は〔m3/s〕で表されます。比体積は乾球温度や相対湿度などが変化すると,同時に変化します。
26 ℃DB,50 % rh の空気の比体積は 0.862 m3/s で,温度が下がると比体積も小さくなります。
<1.2 (1) で記しました密度は比体積の逆数〔1/比体積〕となります。>
(5) 空気の「比熱」
ものには比較的少量の熱で温度がいちじるしく変わるものもあれば,水のようになかなか変わらないものもあります。このことを表わすのに比熱という量を用います。
比熱とは,物質1sを温度1℃(SI 単位では「1K」)だけ上昇させるのに必要な熱量をいいます。空気の比熱は 1.0 kJ/sK(旧単位では,0.24
kcal/s℃)となります。
ここに記したいろいろな用語は,空調機の選定をするための熱負荷計算や,空気の測定データから空調機の能力を算出するときに使われます。