![]() |
第2章 空調方式と空調用機器の分類 |
![]() |
![]() |
2.1 空調方式のいろいろ | ![]() |
空調方式にはいろいろな分類の仕方がありますが,空調する室内から見て,除去する熱(冷房)または必要とする熱(暖房)を搬送する物質(熱媒体)により分類することが可能です。この熱媒体としては冷媒,空気,水の三つが利用されており,次のように空調方式を分類できます。
1) | 冷媒方式 Refrigerant
System 冷媒により室内から熱を運び出したり,室内へ運び入れたりする。 |
2) | 全空気方式 All
Air System 空気により室内から熱を運び出したり,室内へ運び入れたりする。 |
3) | 全水方式 All Water System 水により室内から熱を運び出したり,室内へ運び入れたりする。 |
4) | 空気−水方式 Air-Water System 空気と水により室内から熱を運び出したり,室内へ運び入れたりする。 |
上記以外の分類方法の中では,空調する部分をどのような区画で制御するかにより区分する分類もよく用いられます。
1) | 全体空調方式 | : | 大きな部屋を1つの制御器(温度調節器,湿度調節器等)により制御する方式。 |
2) | ゾーン空調方式 | : | 大きな部屋をいくつかの区画(ゾーン)に分け,そのゾーンごとに1つの制御器で制御する方式。 [例:ペリメータゾーン(外周部)とインテリアゾーン(内周部)にわけて制御する空調] |
3) | 個別空調方式 | : | 各空調機あるいは吹出口ごとに制御する方式。 |
一般の建築物では,建物の使用目的や規模に合わせて,これらの空調方式を選択または組合わせて行なわれています。以下,熱を搬送する媒体による方式分類を説明します。
(1) 冷媒方式
家庭用エアコンや業務用エアコンは,冷媒方式です。建物の各部屋に室内機を配置し,室内で必要とするまたは排出する熱エネルギー(熱量)を室外機へ搬送する媒体として「冷媒」を使用しています。
現在,この冷媒には主にフルオロカーボンが使用されています。室内機にある熱交換器で冷媒が蒸発または凝縮することにより,室内の空気を冷やしたり,暖めたりしています。(この冷凍の原理については第3章で詳しく説明します。)
搬送する媒体の効率を考えると,同じ熱量を搬送する配管またはダクトの口径は空気,水,冷媒の順に小さくなります。最近は,通常の建物では冷媒配管を設置することに工事上の支障が少ないと考えるようになり,天井カセット形や天井埋込ダクト形などの室内機を配置し,冷媒配管で室外機に接続する冷媒方式が多用されています。
この冷媒方式の空調機は室内機単位で運転できるので,個別制御が可能という利点があります。
(2)全空気方式
この全空気方式では建物の空調機械室にエアハンドリングユニットや中大形パッケージエアコンなどを設置し,空調する部屋までダクトで接続されて,循環する「空気」によって空調しています。
ダクト方式の利点は,循環させる空気の吹出口と吸込口を目的にあわせて配置することにより,室内気流を最適にできます。ダクトは必要風量を送る大きさが設計され,吹出口は部屋の用途や目的に合ったものが選定されます。この方式では外気を導入して,中間期あるいは冬季において室内より低温である外気により,いわゆる外気冷房が容易となります。
エアハンドリングユニットとは,その中の熱交換器に冷水や温水(または蒸気)を通して,室内と循環する「空気」に冷却・除湿・加熱を行なったり,加湿器による加湿,エアフィルタなどによる除塵機能を持っているダクト接続方式の空調機器です。これを各ゾーン(区画)または各階に配置して空調します。中大形パッケージエアコンも同様な機能を持っていますが,加熱や冷却及び除湿は「冷媒」で行なっています。
(3) 全水方式
この方式は,熱源機器(冷凍機やボイラなど)によって作られた「冷水」や「温水」を,室内に設置されたファンコイルユニットに循環させて空調を行なう方式です。ファンコイルユニットはホテルの客室など負荷が比較的小さく個別制御する部屋や,部屋の外周部などに多く使用されます。形態には床置形や天井埋込形などがあります。
空調負荷に応じて,ファンコイルユニットの流量や送風量を調整して各部屋の個別制御を行ないます。
(4) 空気−水方式
この方式は,(3)の全水方式のファンコイルユニットと,空調機械室に設置したエアハンドリングユニットを使用して各部屋に冷風や温風を送る方式を組合わせたものです。ファンコイルユニットがペリメータゾーン(外周部)を,エアハンドリングユニットがインテリアゾーン(内周部)の空調を受け持ちます。
この方式の利点等は,全空気方式と全水方式を合わせたものとなります。長い配管距離や高度差のある規模の大きな建物では,熱を搬送しやすい水(冷水や温水)を循環させるこの方式が採用されます。