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第2章 空調方式と空調用機器の分類 |
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2.2 空調用機器の分類 |
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建物や部屋の種類とその使用目的に合わせて空調機器の選定が行なわれています。空調機器の分類はいろいろありますが,ここでは建物の大きさを区分要素として次のように大枠として紹介します。
○住宅用 : ルームエアコン(家庭用エアコン)
○小規模店舗・事務所用 : パッケージエアコン(業務用エアコン)
○大形ビル用 : セントラル空調用機器
家庭用の空調機器は総称としてルームエアコンと呼ばれています。住宅の各部屋の大きさに合った温度調節が可能な容量として,冷房能力でおよそ 5.0 kW 以下の機器が使用されています。その種類は,室内機と室外機が一体で構成されるウインド形と,分離しているセパレート形で大きく分類されます。
1) ウインド形 : 一体形
2) セパレート形(スプリット形) : 分離形
現在の日本では,家庭用エアコンとしてセパレート形がほとんどであり,その室内に設置される機器(室内機)の形態には次のようなものがあります。
1) 壁掛形
2) 床置形
3) ビルトイン形(埋込形)
建物取付位置と各機器の外形 |
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これらの内,「壁掛形」が主流となっています。単にルームエアコンと呼ぶ時はこの「壁掛形」を称します。「ビルトイン形」は次項 (2) 業務用エアコンのビルトイン形と同じく,天井や壁などに埋め込まれて使用される機種です。
室外に設置する機器(室外機)に室内機を1台組合わせるものと,室内機を数台組合わせるマルチタイプがあります。
家庭用のエアコンは「クーラ」とも呼ばれて冷房専用形から使用されましたが,現在は冷暖房兼用(ヒートポンプ)形が普及して,年間を通して使われています。
住宅以外の店舗や一般事務所および中小ビルに使用される冷媒方式の空調機をパッケージエアコンと総称しています。パッケージエアコンとは,圧縮機,熱交換器,送風機などを一つの箱(または二つの箱)に組み込み,機器が構成されているもので,パッケージユニット方式と呼ばれます。
このパッケージエアコンは,大きく空冷式と水冷式に分類されます。空冷式は,室内の熱を「冷媒」で搬送して,「室外空気」に放熱(暖房する場合は吸熱)する方式です。水冷式は「冷媒」で搬送した熱を「水(冷却水)」に放出する方式です。水は地下水を利用するものと,クーリングタワと組合わせて水を循環させながら室外空気に熱を放出するものとがあり,現在はほとんどが空冷式となっています。
1) 空冷式 : 室外空気に熱を放出,または吸熱する。
2) 水冷式 : 水に熱を放出,または吸熱する。
機器の形態として,室内機と室外機が一体で構成されるか分離しているかにより,一体形と分離形があります。空冷式と水冷式との組合わせや,空調する建物や部屋の使用目的や規模構造により,いろいろな機器の形態がありますが,次の形態分類で使用されています。尚,空調機の名称としては各製造メーカにより違う場合もあり,特殊な形態もあります。
・空冷式
分離形
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セパレート形
(圧縮機が室外機にあります。)
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リモートコンデンサ形
(圧縮機が室内機にあります。)
・水冷式
一体形
パッケージエアコンは,当初の水冷式主流から現在は空冷式主流に移行しています。また,当初は床置形の室内機が大部分でしたが,現在は店舗や一般事務所および中小ビルでは,使用される室内機の形態は,建物の使用目的に合わせて前頁図に示すいろいろな種類があります。また,室外機に室内機を1台組合わせるものと,室内機を複数台組合わせるマルチタイプがあります。
特に,中小ビル用としてビル用マルチシステムがあります。1台の室外機に数台から 10 数台の室内機を接続するシステムです。これに対して,ビルの各階や各ゾーンを区分してダクト形パッケージエアコンを配置し,各部屋にダクトを接続して空気を循環させるシステムなどもあります。
大形ビルや規模の大きい空調設備では利用しやすい冷水や温水を,冷水は冷凍機で冷却し,温水(または蒸気)はボイラで加熱して,室内側の2次側空調機に循環させて空調を行ないます。2次側空調機には,小形のファンコイルユニットから大形のエアハンドリングユニットなど,用途や空調方式により最適のものが使用されます。また,この2次側空調機は建物の使用目的に合わせて専用設計されるものもあります。
このような空調システムは,空調設備として次の各装置・機器から構成され,これらの機器をセントラル空調用機器と呼んでいます。
1) | 熱源機器 2次側空調機で必要な冷水,温水(または蒸気)などを作ります。冷凍機(ターボ冷凍機,ウォターチリングユニット),吸収式冷温水機,ボイラなどの熱源機器と,これらの運転のために必要なポンプ・冷却塔・油タンク・都市ガス設備などの諸機器で構成されます。 |
2) | 2次側空調機 2次側空調機は,冷却コイル,加熱コイル,加湿装置,エアフィルタなどと,送風機(ファン)より構成され,室内の熱負荷を処理し,空気を清浄に保ちます。 尚,外気(新鮮空気,fresh airともいう)を取り入れ,室内からの戻り空気と混合して送風することもあります。この外気は室内の人の呼吸や,発生する臭気・タバコの煙などで汚染された空気を更新浄化します。 |
3) | ダクト設備 空気の搬送経路がダクトです。2次側空調機で処理した空気はダクトを通じて搬送され,吹出口から室内に供給されます。室内の負荷を処理した空気は吸込口からダクトを介して2次側空調機まで返します。 |
4) | ポンプおよび配管設備 水などの熱媒体を搬送する動力となるのがポンプであり,その経路が配管です。熱源機器で作った冷水,温水(または蒸気)は,配管を通じて2次側空調機に送られ,2次側空調機で負荷を処理したのち熱源機器まで返されます。冷凍機などで除去した熱を外部に放出するために,冷却塔まで冷却水を運びます。 |
5) | 自動制御機器 2次側空調機では負荷量に応じて冷温水流量を調整し,吹出し温湿度を制御します。また,吹出し空気の風量を制御する場合もあります。外気の導入量についても制御します。熱源機器では冷温水温度を維持すると共に,負荷量に応じて運転台数や容量を制御します。ポンプでも台数や容量を制御します。 このように,空調設備全体が室内の温湿度を最適に維持し,かつ経済的な運転をするための機器が自動制御機器です。 (これらの装置・機器については,第4章で詳しく説明します。) |
[担当:内藤久保]
【第2章参考文献】
1)「空気調和システム」 新日本空調(株)
2)「空気基礎講座=原理・施工・保守管理」 ダイキン工業(株)