基礎知識

第5章 エアコンの選定

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5.4 冷暖房負荷簡易計算法

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 この冷暖房負荷簡易計算法は,ルームエアコンあるいは中・小形のパッケージエアコンを用いて人を対象とする一般の空調に適用するもので,エアコンの能力を選定するための最大負荷を算出するためのものです。

(1) 計画設計条件

 簡易負荷計算法の場合の,設計の基準とする室内外の条件は次のとおりです。

1) 冷房負荷計算

  乾球温度
(DB)
湿球温度
(WB)
相対湿度
(RH)
室外条件 33℃ 27℃ 63%
室内条件 26℃ 19.5℃ 55%

※この冷房時の室内・外条件は,係数「B」に含まれているので,温度差を計算する必要はありません。

2) 暖房負荷計算

外気温度
(℃)
東京 名古屋 大阪 京都
0 0 0 0
外気温度
(℃)
福岡 新潟 青森 札幌
+1 -1 -8

-12


室内温度
(℃)
活動の状態
22 静かにしている場合 事務所・劇場・住宅・食堂等
20 少し活動する場合 工場(軽作業)・学校・商店等
18 激しく活動する場合 工場(重作業)・ダンスホール等

※室内・外温度差を,上表から計算します。特に,夜間暖房を重視する場合は,外気温度を上表より2℃低くします。

(2) 冷暖房負荷簡易計算法の手順

 計算は,表5.15に示す「冷暖房負荷簡易計算書」を用い,表5.4〜表5.14に示す各表から該当する係数(数値)を読み取って,「冷暖房負荷簡易計算書」に記入して計算を進めます。

1) 外気に面した壁

冷暖房負荷簡易計算書

☆項目欄に,各壁面の方位・寸法を記入します。
☆A欄には各壁面の面積を記入します。
 但し,壁面の面積には窓(ガラス)の面積は含みませんので,差し引いておきます。
☆<冷房>
係数B―表5.4参照
・B,Q欄を記入します。
・負荷Q欄は,A欄×B欄×f欄の積で求めます。
☆<暖房>
・係数E―表5.4参照
・E,T,H欄を記入します。
・室内外温度差T欄は,計画設計条件の〔室内温度−外気温度〕で計算します。
・負荷H欄は,A欄×E欄×T欄の積で求めます。

表5.4 外気に面した壁

壁の種類 係数B(W/m2 係数E
(W/m2℃)
東南 南西 西 北西 北東
軽構造〔木造シックイ仕上げ等〕 43 40 34 50 59 49 20 33 2.9
中構造〔コンクリートブロック等〕 47 44 40 56 65 52 17 37
重構造〔コンクリート20cm厚等〕 40 40 36 47 43 30 19 34 3.5

2) 屋根

表5.5 屋根

屋根の種類 係数B
(W/m2℃)
係数E
(W/m2
軽構造
(瓦・スレート・トタンぶき等)
天井あり 192 3.5
天井なし 70 1.7
中構造
(厚くないコンクリート断熱材)
天井あり 107 2.3
天井なし 44 1.7
重構造
(厚いコンクリート断熱材)
天井あり 50 1.2
天井なし 27 1.2

<参考>

☆階上に部屋がある場合は,この欄は不要です。
☆項目欄には,寸法を記入します。
☆A欄には,屋根の面積を記入します。
☆<冷房>
・係数B―表5.5参照
・B,Q欄を記入します。
・負荷Q欄は,A欄×B欄×f欄の積で求めます。
☆<暖房>
・係数E―表5.5参照
・E,T,H欄を記入します。
・室内外温度差T欄は,計画設計条件の〔室内温度−外気温度〕で計算します。
・負荷H欄は,A欄×E欄×T欄の積で求めます。

3) 窓ガラス

☆項目欄に,外壁に付いている各窓ガラスの方位・寸法を記入します。
☆A欄には各窓ガラス面の面積を記入します。
☆<冷房>
・係数B―表5.6参照
 但し,窓が2方位以上にある場合は,A欄×係数Bの値が最も大きい値を示すもののみ「日の当る窓」の数値をとり,他の窓については「日影の窓」の値をとります。
・係数f―表5.7参照
・B,f,Q欄を記入します。
・負荷Q欄は,A欄×B欄×f欄の積で求めます。
☆<暖房>
・係数E―表5.6参照
・E,T,H欄を記入します。
・室内外温度差T欄は,計画設計条件の〔室内温度−外気温度〕で計算します。
・負荷H欄は,A欄×E欄×T欄の積で求めます。

表5.6 窓ガラス

窓ガラスの種類 日陰の窓 係数B(W/m2 係数E(W/m2℃)
日の当る窓
東南 南西 西 北西 北東
普通板ガラス〔3mm厚 1枚〕 70 686 500 361 616 826 628 174 512 6.4
普通板ガラス〔6mm厚 1枚〕 64 628 454 337 558 756 570 163 465
吸熱板ガラス〔3mm厚 1枚〕 41 430 314 256 395 512 395 105 314
二重板ガラス
〔室外側吸熱ガラス・室内側6mm普通板ガラス〕
35 337 244 198 302 395 302 81 250 2.6
ガラスブロック 29 384 221 151 302 419 279 47 233 2.9

表5.7 窓ガラスに対する,日除けの係数

日除けの種類 係数f
日覆いが外側にある場合 0.25
ヴェネッシャンブラインドが内側にある場合 0.7
比較的厚地のカーテンをかけた場合 0.8
比較的薄地のカーテンをかけた場合 0.9

<参考>

日覆いが外側にある場合 ブラインドが内側にある場合

4) 間仕切

☆項目欄に,間仕切の方位・寸法を記入します。壁以外の場合は,間違わないよう名称を記入します。
 隣室が,冷暖房している場合は,その面からの熱の出入りがありませんので,記入(計算)不要です。
☆A欄には各壁面・ガラス等の面積を記入します。
☆<冷房>
・係数B―表5.8参照
・B,Q欄を記入します。
・負荷Q欄は,A欄×B欄×f欄の積で求めます。
☆<暖房>
・係数E―表5.8参照
・E,T,H欄を記入します。
・室内外温度差T欄は,隣室が暖房していない間仕切は,計画設計条件の{室内温度−(外気温度+5)}で計算します。
・負荷H欄は,A欄×E欄×T欄の積で求めます。

表5.8 間仕切

間仕切の種類 係数B(W/m2 係数E(W/m2℃)
障子・ガラス 15 5.2
その他 9 3.1

5) 天井・床

☆項目欄に,天井・床それぞれの寸法を記入します。
 但し,階上・階下の各部屋が冷暖房している場合は,その面からの熱の出入りがありませんので,記入(計算)不要です。
☆A欄には,天井・床それぞれの面積を記入します。
☆<冷房>
・係数B―表5.9参照
・B,Q欄を記入します。
・負荷Q欄は,A欄×B欄×f欄の積で求めます。
☆<暖房>
・係数E―表5.9参照
・E,T,H欄を記入します。
・室内外温度差T欄は,〔階上が暖房していない天井〕・〔階下が暖房していない床〕・〔地面に直接接している床〕それぞれに,計画設計条件の{(室内温度−(外気温度+5)}で計算します。
・負荷H欄は,A欄×E欄×T欄の積で求めます。

表5.9 天井・床

天井及び床の種類 係数B(W/m2) 係数E(W/m2℃)
コンクリートを打ったまま 12 3.5
床にリノリューム又はカーペットを敷いたもの 8 2.3
木造の床板畳敷き 5 1.2
地面に接した床 0 1.2

6) 外気

冷暖房負荷簡易計算書

☆外気による負荷は必要外気量と侵入外気量の双方を計算しいずれか大きい方の数値をとります。
☆A欄の必要外気には在室者数(人数)を,又,侵入外気には室内容積(m3)を記入します。
☆<冷房>
・係数B― 必要外気:表5.10参照       
侵入外気:表5.11参照
・係数f―表5.12参照
・B,f,Q欄を記入します。
・負荷Q欄は「必要外気」並びに「侵入外気」の双方についてA欄×B欄×f欄の積を計算しいずれか大きい方の数値のみ記入します。
☆<暖房>
・係数E― 必要外気:表5.10参照
侵入外気:表5.11参照
・E,T,H欄を記入します。
・室内外温度差T欄は計画設計条件の〔室内温度−外気温度〕で計算します。
・負荷H欄は「必要外気」並びに「侵入外気」の双方についてA欄×E欄×T欄の積を計算しいずれか大きい方の数値のみ記入します。

表5.10 必要外気

適用される場所 係数B(W/m2 係数E(W/m2℃)
銀行・百貨店・劇場・煙草を吸わない場所 158 5.8
事務所・会議室・ホテル・食堂・喫茶店・病院・アパート 242 8.7
私室・煙草を吸う場所 465 17.5

《参考》在室者が不明の時は,下記を参照し,在室者数を求めてください。
・ホテル客室,病院個室
床面積10m2当り 1人
・一般事務室,美容院,理髪店,写真場
床面積10m2当り 2人
・一般商店,住宅,アパート
床面積10m2当り 3人
・会議室,喫茶店,食堂,料亭客室,バー
床面積10m2当り 6人
・デパート 床面積2〜3m2当り 5人
・劇場 客席床面積0.8m2当り 1人

表5.11 侵入外気

  係数B(W/m2 係数E(W/m2℃)
標準 9.3 0.4
人の出入りの多い室又は,外気に面した窓の多い室 14〜19 0.5〜0.7

表5.12 外気に対する地方係数

地方 係数
北海道 0.8
東北・北陸 0.9
その他の地方 1.0

7) 室内発生熱

☆室内発生熱の負荷は,在室者・電灯・電気機械器具・ガスの各負荷に分類して計算します。
☆A欄は,
  在室者の項――――――――通常の在室人員を,
  電灯及び電気機械器具の項―各項目の合計kWを,
  ガスの項――1時間当りのガス消費量m3/hを,
 記入します。
☆<冷房>
・係数B―― 在室者の項:表5.13参照
ガスの項 :表5.14参照
・係数f――電灯や電気機械器具が,同時にしかも連続して使用されることは少ない。従って,これらの稼動状況を調査して,使用率を決める必要があります。〔例:0.5,0.6〕
・B,f,Q欄を記入します。
・負荷Q欄は,A欄×B欄×f欄の積で求めます。
☆<暖房>
・暖房負荷計算時の室内発生熱は,暖房負荷を助けることになりますので,特に計算はしません。

表5.13 在室者

在室者の状態 係数B(W/人)
腰をかけている 劇場・喫茶店 116
事務をとっている 事務室・ホテル・食堂・百貨店 140
作業をしている 工場・ダンスホール 233

表5.14 ガス

ガスの種類 係数B(W/m3
都市ガス(6B) 5,815
都市ガス(6C) 5,234
天然ガス(13A) 12,791
プロパンガス(P20) 27,907

8) 全負荷

☆冷房負荷計算時は,負荷Q欄の合計を求めます。
☆暖房負荷計算時は,負荷H欄の合計を求めます。
☆冷房・暖房双方共,負荷の中には,あらかじめ安全率を見込んでありますので,特に割増する必要はありません。
 この全負荷に対して,処理能力のある機種を選定してください。

冷房(暖房)負荷≦空調機の冷房(暖房)能力

表5.15 冷暖房負荷簡易計算書

注1. 外気に面した壁のガラスの面積です。(項目1「外気に面した壁」では,ガラスは含みません。)
注2. 屋根は最上階の場合で,中間階は天井の項目になります。
注3. 窓ガラスは,外気に接している部分のみです。
注4. ガラス面が2方位以上ある場合,表5.6の「日のあたる窓」の係数Bを用いて計算し,最大値はそのまま(西:係数75 6で4233.6)にして,他の小さい値(南:係数337で計算すると3774.4)は,再度「日陰の係数」(南:64)を用いて計算し,これを代入します。
注5. 表5.7による。
注6. 間仕切の内,ガラス・障子は係数が異なりますので,表5.8により別に計算します。
注7. 外気:必要外気(人数に対して)と侵入外気(部屋の容積に対して)をそれぞれ計算して,どちらか大きい方の値を採用し,他は用いません。
注8. 同時使用率1とは,100%使用していることで,この演習の場合には特に断わりがありませんので,1としました。
注9. 間仕切・天井・床の場合,隣室・天井の階上・床の階下などが暖房していない場合は,室内外温度差T={室内温度−(室外温度+5℃)}とします。(暖房している場合は,温度差0で,計算不要となります。)

(3) 冷暖房負荷簡易計算の演習

 冷暖房負荷簡易計算法の方式に従って,次に示す事務室の冷暖房負荷計算をしてみましょう。

〔条 件〕
・場  所:東 京
・建  物:5階建鉄筋コンクリートビルの2階
・在室人員:20名
・活動状況:事務仕事
・照  明:蛍光灯 40W×20本=800W
・建物構造:中構造の外壁,6mm厚の普通板ガラス,床はリノリューム張り
・隣室状況:1階と3階及び隣室と廊下は冷暖房なし
 計算結果を前ページ表5.15に示します。

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